佐藤啓介、井上道夫
数年前と比べて、コンビニエンスストアのここが変わった、と思うところはどこでしょうか。コンビニの商品やサービスは、社会や世相を映し出します。その変化から、約7年8カ月にわたった第2次安倍政権下の社会を考えます。
「必要なときに大体のことができる場所。身近にあることは安心材料のひとつ」。神戸市で美容室を経営する女性(30)にとって、コンビニエンスストアはそんな存在だ。
出勤途中に立ち寄り、朝食のヨーグルトとナッツ、それから昼食と飲み物を買うのが定番の一日の始まり。愛用する理由は「慣れと安定感」だという。栄養面や見た目も気になるが、コンビニごとにパッケージが統一された商品も増え「スーパーより選びやすいし、味も外さない(がっかりすることがない)イメージがある」。支払いは電子マネーの「クイックペイ」だ。
3年前に自分の店を開いてからは経理書類を扱うため、コンビニのマルチコピー機を使う機会も増えた。フリマアプリで売れた商品の発送も、夜遅くまで開いているコンビニを使っている。
拡大するコンビニの伸長
1970年代から日本でも広がったコンビニは、いま全国で約5万5千店を超えた。最近は店舗数が頭打ちになっているものの、第2次安倍政権発足後の7年半で約9千店舗増えた。業界全体の来店客数や売上高も、2度の消費税率引き上げがありながらも成長を続けてきた。2019年の増税時にはキャッシュレス決済のポイント還元をアピール。百貨店やスーパーが苦しむなか堅調な売り上げを保った。
業界誌「月刊コンビニ」の毛利英昭編集長は「緊急買い・ついで買いという従来のイメージを変え、女性や高齢者ら新たな客層を取り込んだ」と、この間の業界の動きを読み解く。
急速な少子高齢化のもと、働き手の確保に力を注いだ安倍政権。コンビニのサービスも、そんな社会の動きをとらえて拡大してきた。働く女性の増加や健康志向の高まりを受け、低カロリーや低糖質が売りの商品を次々に開発。高齢者らを念頭に調理の手間がかからない小分けの総菜も増やした。セルフ式コーヒーを片手に、イートインスペースで仕事の用事を済ませる勤め人の姿も目立つようになった。
人口減や後継者不足などで古く…
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