水戸部六美
国連の生物多様性条約事務局は15日、生物多様性保全のために2020年までに各国が取り組む項目を掲げた「愛知目標」が、「いずれも完全には達成できなかった」などとする報告書を公表した。来年、新たな世界目標を決める予定だが、この結果を教訓に「努力のさらなる拡大」のために産官の連携や社会の関与が必要としている。
拡大する今回まとまった報告書「地球規模生物多様性概況第5版」の概要版(生物多様性条約事務局のウェブサイトより)
愛知目標は、10年に名古屋市で開かれた生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)で採択された。50年に自然と共生する世界を実現するため、20年までに達成すべき20項目を掲げている。
報告書によると、COP10で採択された名古屋議定書による遺伝資源へのアクセスや利益配分など、一部が達成または達成見込みのものが6項目あったが、すべての要素が達成された項目はゼロだった。
生物多様性保全のために各国が設定した国別目標が不十分で、愛知目標の達成に必要な範囲やレベルに必ずしもなっていなかったという。
報告書は、50年のビジョンとして掲げる「自然との共生」を実現するには「人間の幅広い活動を従来のものから大きく転換する必要がある」と警告。生物多様性の保全・再生だけでなく、気候変動対策や食料の生産・消費様式の変革など、様々な分野の行動を連携させていく必要があるとした。
また新型コロナの世界的な流行の背景に、野生動物の生息域への人間社会の侵食などが指摘されていることを念頭に、コロナ禍からの復興で環境を意識することは「生物多様性を回復に導くとともに、将来の感染症の世界的流行のリスクを下げる」とした。
報告書は同条約事務局が約170の国別報告書や様々な生物多様性に関する研究成果やデータなどを分析してまとめた。
生物多様性は地球温暖化に比べて認知が低く、内閣府が19年に行った環境問題に関する意識調査では「言葉を聞いたことがない」が47・2%に達している。また30年までの次の10年に向けた「ポスト愛知目標」が採択される予定の同条約第15回締約国会議(COP15)は、新型コロナウイルスの影響で、今年10月から来年5月に延期されている。(水戸部六美)
拡大するCOP10で「愛知目標」などが採択され、拍手する各国代表やNGOメンバーら=2010年10月、名古屋市熱田区
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