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 30分間の皿洗いでなんでも食事代無料――。そんなサービスで、延べ3万人もの学生らの胃袋を満たしてきた「餃子(ギョーザ)の王将出町店」(京都市上京区)が10月末に閉店する。店長の井上定博(さだひろ)さん(70)が「若者に食べ物で困ってほしくない」との思いで続けてきたが、古希となり、後継者もいないため、のれんを下ろす。

 井上さんは20歳のとき、周囲に結婚を反対され、駆け落ち同然で家を飛び出した。6畳間のアパートで食費を切り詰め、トラック運転手や食品加工作業員など職を転々。見かねた知人が、井上さん夫婦を夕食に招き、すき焼きをごちそうしてくれた。その時の感謝の気持ちが、無料サービスの原点になった。

拡大する写真・図版「取締役 島耕作」36話の一場面(C)弘兼憲史/講談社

 「腹が減ってどうしようもないとき、食えたら明日のことを考える力がわく。この一食が大事なんや」

 王将社員となり、別の店を任された1982年、学生を対象に無料サービスを始める。95年、京大や同志社大、京都府立医大などに近い出町桝形商店街(京都市上京区)に出町店を構えた後も続けた。

 部活動や資格試験の勉強、就職活動などでアルバイトをする時間がないという学生たちが、多いときは1日に10人近く流し台の前に立った。

 衛生面の観点から、2年前に学生による「皿洗い」をとりやめに。その代わり、仕送りが遅れていたり、前日から食事をとっていなかったりする学生に限って無料で食事を提供。現在も、月に2~3人が申し出て食べて行く。

 井上さんは「学生たちは『タダで食べよう』くらいにしか思ってへんやろ」と笑う。それでも、大学を卒業してから数年後、「実は学生のころお世話になりまして……」と顔を出す人もいる。「大勢の後輩たちのお食事代の何千分の一かの代わりに」と、1万円を贈られたこともあった。井上さんは「もったいなくて一生使えへんよ」。

拡大する写真・図版「餃子の王将出町店」店長の井上定博さん=2020年9月8日、京都市上京区、筋野健太撮影

 閉店を聞きつけた常連客らに「…

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