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 日産自動車は16日、スポーツカー「フェアレディZ」の新型車を正式に発表した。2021年内に発売される予定。Zの新型車は2008年以来で、7代目となる。同日、オンラインイベントを開き、プロトタイプ(試作車)も公開した。

 新型車の不足などで業績が悪化している日産は今年5月、立て直しのために新型車12車種を1年半で相次いで投入する計画を発表。その際に公表した予告動画で「Z」の文字が大きく映し出される演出があり、発売が予想されていた。

 イベントで内田誠社長は「事業構造改革でも重要なモデル。革新の伝統を受け継ぎ、ピュアスポーツとして送り出す」と語り、期待を込めた。

 公開された試作車は2ドアの6速マニュアル。横浜市のニッサンパビリオンで17日から10月4日まで展示される。(神沢和敬)

【解説】熟成と価格競争力が成功のカギ

 日産自動車がユーチューブによるオンライン中継で世界にお披露目した、フェアレディZの新型プロトタイプ。デザインには歴代モデルからの引用が多く見られ、12年越しの新型発表を心待ちにしていたファンからは称賛の声が上がった。

 新型Zは、多くのファンが期待した現行Z34型の全面的な刷新ではなく、あくまで基本骨格を維持した大幅改良版とみられる。将来の市販に際しては、2008年デビューという基本設計の古さを補完するような走りの熟成と価格競争力で、商品力を保てるかが焦点となる。

 アンヴェールされたボディーはフロントノーズを極力、伸びやかに長く見せる造形。逆スラントの開口部が大きいフロントグリルは、初代S30型を思わせる。

 リアにかけても伸びやかなクーペ形状が続き、後端はストンと切り落とされたようなシャープな印象。こちらは細い横長のテールランプも相まって、4代目のZ32型を連想させる。

 これら歴代モデルへのオマージュたっぷりの造形に、日産による発表中継を見たファンの間では「歴代Zの特徴をうまく採り入れた」「ロングノーズが艶(つや)っぽくて良い」「昭和風令和感が絶妙」といった好意的な反応が多かった。

 インテリアは、中央の3連メーターや逆スラントのエアコン吹き出し口が、外装同様に初代を強くイメージさせる。一方、メーターパネルは全面デジタルディスプレーとなり、近年の高級車のトレンドを採り入れた先進的なコックピットとなった。

 メカニズム面では、内田誠社長がV6ツインターボと6速マニュアルトランスミッションの搭載を明言。昨年9月の一部改良でスカイラインに追加されたスポーツグレード「400R」に積まれる405馬力仕様の流用とみられ、Zに相応しい力強い走りが期待できそうだ。

 内田社長は発売時期について明言を避けたが、すでに公表している販売計画によれば、向こう1年数カ月の間には投入される見通し。大きな焦点となるのは販売価格だ。

 日産は、長きにわたる合理化でシルビアや180SXなどのスペシャリティーカーを廃止。国内ではプラットフォームを共有するスカイラインクーペも販売を見送っており、Z一台で幅広い客層にアピールする必要がある。

 販売面では、トヨタ86、トヨタ・スープラ、レクサスRC、さらに北米ではフォード・マスタングやシボレー・カマロ、独ポルシェの下位モデルあたりまでがライバルになる。ハイパワーの豪華仕様を設ける一方で、プレーンな装備の廉価モデルを用意するなどして、価格競争力を維持できるかが成功のカギだ。

 新型Zのコンセプトについて、内田社長は「ドライバーが主役のピュアスポーツカー」と強調。日産が経営の大きな柱に据える電動化モデルの投入も期待されたが、当面は見送られそうだ。

 現行型の骨格を維持しながら、新たな装いを打ち出す新型Z。画期的な技術革新や飛び道具的な装備が見込めない代わりに、12年分の着実な進化が求められる。安心感とワクワク感を両立した操縦安定性や乗り味、官能的な吸排気音など細部を煮詰めてスポーツカーとして熟成させたうえで、満を持しての市販に期待したい。(北林慎也)