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 2020年10月から、ロタウイルスワクチンが定期接種になります。日本では11年から輸入されてきましたが、高かったですね。任意接種だったため医療機関によって金額が違いますが、総額で3万円前後かかっていました。

 WHO(世界保健機関)は13年に、ロタウイルスワクチンは世界中のすべての国の予防接種プログラムに導入されるべきであると提言しています。海外ではすでに130カ国以上で定期接種になっていたので、小児科医も保護者の方たちもずっと待ち望んでいた定期接種化でした。ただし20年8月1日以降に生まれたお子さんからは定期接種ですが、それ以前に生まれたお子さんは残念ながら任意接種です。

大人もかかる感染症

 ロタウイルス感染症とはなんでしょう。冬の終わりから春にかけて流行する急性の胃腸炎で、熱が出て吐いたり下痢をしたり、脱水やけいれん、腎不全、脳症の原因になったりします。日本では年間80万人くらいが感染し、00年から12年では、年により2~18人が亡くなっています。亡くならないまでも、5歳までの胃腸炎での入院の半数くらいがロタウイルスによるものです。子どもの病気だと思っている人がいますが、大人でもかかります。でも、感染する時期が幼ければ幼いほど重症化のリスクが高いので、ワクチンがあるんですね。

 一般的にウイルスの感染症は、ウイルスがある程度たくさん体に入らないと発症しません。しかしロタウイルスはずっと少ない10~100個くらいで胃腸炎になってしまいます。そのため、吐いたり下痢をしたりした子どものオムツの処理などをしているうちに、数十個くらいのウイルスが口から入れば、うつってしまいます。患者さんの便1グラムにロタウイルスは数億~数兆個含まれます。そして、家の中にある衣類やオモチャ、家具などにウイルスが付着すると10日間くらい感染力があります。だから衛生状態をどんなによくして気をつけていても、感染した人がいればもらってしまうリスクが高いのです。

 抗菌薬は効かず、抗ウイルス薬もないため、発展途上国でも先進国でも、根絶は難しい感染症です。ワクチンに反対の意見を持っている人は、感染症はかかった方がしっかり免疫がつくといいますが、ロタウイルスはすべての人が完治するわけではない感染症です。重症の脱水症状になったりロタウイルス脳症になったりして、抗体価は上がったけれども後遺症が残ったり亡くなったりしたら困りますね。そして、インフルエンザのように毎年のように流行するタイプが変わるので、1回かかればもう大丈夫というものではありません。

唯一の経口ワクチン

 ロタウイルスワクチンは経口ワクチンで、現在の日本では唯一、注射ではない予防接種です。GSKという会社が開発した「ロタリックス」というワクチンと、MSDという会社が開発した「ロタテック」の2種類があります。ロタリックスは、生後6週から24週までに2回、ロタテックは、生後6週から32週までの間に3回飲みます。口に付着する程度のわずかな量でも効果があるので、ワクチンを飲んだ後に吐いてしまっても、飲み直す必要はありません。

 どちらのワクチンを選んでも、効果に変わりはありません。しかし2回飲むロタリックスを1回だけ飲み、次から3回飲むロタテックに途中で変更する、といったことは推奨されていません。医療機関によってはどちらかしか置いていないということがあります。受けようと思うクリニックや病院で聞いてみましょう。

 副反応を心配する方がいるかも知れません。嘔吐(おうと)、血便を繰り返し、治療が遅くなると手術が必要になる「腸重積」という病気と関連があるのではと指摘されたこともありました。しかし開発途中で、月齢の大きい子には腸重積を発症することがありましたが、現在のワクチンで決められた接種方法だった場合は問題ありません。ワクチンを飲んだ子と飲まなかった子に腸重積を起こす頻度は変わらないことが、複数回行われた大規模な調査でわかっています。ロタリックスもロタテックも他に起こることがある副反応は、易刺激性、下痢、せきや鼻水といったものでした。

 ロタウイルスワクチンは、それぞれ24週、32週を過ぎると接種することはできません。それは定期接種になっても変わらないので、わからないことや質問がある方は今のうちに医療機関で聞いたり、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/index_00002.html別ウインドウで開きます)や、「NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会」のホームページ(https://www.know-vpd.jp/vpdlist/rota.htm別ウインドウで開きます)で調べたりしてみましょう。

森戸やすみ

森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はどうかん山こどもクリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。