拡大する写真・図版立命館大教授の小川さやかさん

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 このところ新世代の活躍がめざましい文化人類学界きってのホープが、この人だ。小川さやかさん(42)。大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞して話題の「チョンキンマンションのボスは知っている」は、香港のタンザニア商人たちのネットワークに密着した。徹底したフィールドワーク(現地調査)を通じて、人間社会の混沌(こんとん)の探究に挑み続けている。

記事の後半では、小川さやかさんのインタビューがご覧頂けます。

 人なつこさと度胸を武器に、異境へ向かう。各地でたれこめる分断の暗雲にも臆さず、軽々と壁を乗り越えてゆく新世代の学究である。

 今年の河合隼雄学芸賞と大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞した『チョンキンマンションのボスは知っている』は、香港が舞台。はるかアフリカから一獲千金を夢見てやって来たタンザニア人たちに2016年秋から半年以上密着し、「魔窟」と呼ばれる雑居ビルを拠点にうごめく中古品輸出ビジネスを内側から活写した。

 約束はいつも大幅遅刻、下ネタ連発、借金の依頼など、ダメ人間ぶりが憎めない「ボス」や同胞たちの関係は独特だ。互いを信用せず踏み込まない個人主義の一方、できる範囲で助け合うシェアのしくみがある。

 「グローバル化の競争の末端で折り合いをつけながら、贈与や分配の世界観も息づく。矛盾し、せめぎあうもの同士の共存が面白いんです」

「ウジャンジャ」とは何ものか

 専門は経済人類学・アフリカ研究。01年、京都大大学院から単身、タンザニアへフィールドワーク(現地調査)に出かけ、都市の路上商人に声をかけられたのがすべての始まりだ。

 何の後ろ盾もない貧しい若者たちが、行き交う人々を実によく観察していることに感心した。だましだまされの「ウジャンジャ」(スワヒリ語で、ずる賢い知恵の意)とは何ものか。それが知りたくて商売の列に加わり、炎天下、古着を売った。商才を発揮し、やがて大勢の小売商と取引する立場に。一躍、街の有名人となった。

 信頼していた仲間に次々逃げら…

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