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医の手帳・新型コロナとインフルエンザ

 今年1月に日本で最初の新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の患者さんが出てから、9月初旬の時点で日本の感染者数の累計は7万人、死亡者数は1300人を超えました。7月からの全国的な流行は収束の兆しを見せていますが、冬季に再度流行が起こることが予想されています。一方、インフルエンザは毎年冬に流行しますが、例年のインフルエンザ感染者数は推定約1千万人と言われており、直接または間接的にインフルエンザで亡くなる方は1万人に上ると推計されています。今年はこれら二つの感染症が同時に流行する可能性があり、重大な事態が起こることが危惧されています。

 実際に二つの感染症が同時流行することでどのような問題が起こるでしょうか。一つは診断です。例えば発熱、のどの痛み、せきなどの風邪症状が出たとき、インフルエンザ、COVID―19、風邪、いったいどれだと思いますか? 症状だけで診断することは難しく、外来では検査を実施します。どの検査を実施するかは流行の状況によりますが、インフルエンザの検査が陰性であれば、COVID―19の検査を追加する必要があるかもしれません。インフルエンザとCOVID―19の混合感染の報告もあるので、インフルエンザであってもCOVID―19ではないとは言えません。結局両方の検査を行うことになれば、外来での待ち時間も増えます。インフルエンザが例年通り流行すれば外来は大変混雑し、外来でCOVID―19の感染が広まってしまう可能性さえあります。

 もう一つは入院診療です。インフルエンザもCOVID―19も多くの方は対症療法のみで治癒しますが、COVID―19は感染症法上、原則入院が必要な感染症に指定されています。また、病状が悪化した場合、COVID―19に有効な抗ウイルス薬がまだなく、酸素を投与し全身の状態を維持しながら回復を待つしかありません。実際に治癒するまでに何週間もかかることがあります。毎年インフルエンザの影響で多くの高齢者が入院しますが、同時流行すれば、入院を要する体調でも入院して治療が受けられない方も出てくるでしょう。

 ではどうしていけばよいでしょうか? いずれの問題も流行規模を抑えていくことで避けることができます。大規模な流行に向けて医療体制を整えていくことはもちろんですが、予防に勝るものはありません。

 感染症の代表的な予防策の一つにワクチンがありますが、COVID―19にはまだ有効性が示されたワクチンがありません。現時点でもっとも効果的な予防法は、皆さんが日頃実施している、マスク、せきエチケット、手指消毒、手洗い、3密の回避、ソーシャルディスタンスなどの感染予防対策です。同じ予防策はインフルエンザにも非常に有効ですので、これらの対策を徹底して継続することで、COVID―19のみならずインフルエンザの流行を抑えることも可能です。インフルエンザワクチンは、年齢により差はありますが、発病、重症化の予防に有効ですので、積極的に接種することをおすすめします。

 皆さん一人ひとりの予防行動が未曽有の事態を防ぐことにつながります。引き続き感染予防対策の実施をよろしくお願いします。(佐久総合病院佐久医療センター 嶋崎剛志医師(救命救急センター))