[PR]

 秋の高校野球シーズンが始まり、各地で球音が響いている。新型コロナウイルスの影響で今夏の独自大会はすべて無観客で行われたが、秋は一般客を入れて開催する地域もある。新チームが発足し、気分一新。運営側も試行錯誤をしながら新しい「観戦の形」を模索している。

 「お客さんがいたので、いいところを見せようと気合が入りました。少し力んじゃいましたけれど」。加茂暁星(新潟)の1番打者・椿(つばき)大雅は笑顔で声を弾ませた。今月6日の県秋季大会開幕戦。新潟西を相手に、一回に椿が三塁打を放つと、みどりと森の運動公園野球場の観客席からどよめきが起きた。約400人。全員がマスクを着用している。声援はないが、好プレーが生まれるたびに拍手が送られた。

 全国に先駆け、新潟で一般客を入れて公式戦が開催された。観客席の半分程度に入場者数を制限し、入場時に検温や除菌、名前や連絡先の記入も徹底した。県高野連の富樫信浩会長は「県や専門家と協議を重ね、問題ないと判断した」と話す。そのうえで「多くの人に野球のおもしろさを知ってもらいたいし、選手にとっても、人の目がある中でプレーすることは成長していく上でとても大事」と説明する。

 日本高野連は8月、秋の大会に向けて有観客試合のガイドラインを作成した。各高野連はそれに基づき、地域の実情に応じて観戦方法などを判断。新潟のほか、愛知、高知でも1回戦から一般客を入れて大会を開いている。

 背景には、切実な実情も絡む。高知県高野連の山崎正明理事長は「お客さんがいないと収入はゼロ。いつまでも無観客のままでは来年以降、大会を開催できなくなってしまう」。球場使用料やボール代など、運営費は入場料収入で賄っているからだ。高知の入場料は大人500円、中高生100円。20日に高知市営球場であった明徳義塾―高知商戦は今大会最多の600人が詰めかけた。

 愛知県高野連の神田清理事長はファンの野球離れに危機感を抱いた。「高校野球ファンが球場で試合を見られない状況が続き、このままではファンの減少につながりかねない。ここで一歩前進することを決めた」

 一方で、多くの都道府県では夏と同様、控え部員や家族に入場を限定するなど原則無観客で大会を開催している。大阪や兵庫などでは会場や日時も公表せず、感染予防を徹底する。感染者が少ない地域でも自治体からの要請に従うしかないのが現状だ。

 23日現在、コロナ感染者が計36人と全国的にも少ない鳥取県。県高野連の田村嘉庸(よしのぶ)理事長は複雑な胸中を明かす。「県が感染防止を強くうたっているので、観客を入れられる状態ではない。スタンドには次の試合の選手たちがいるだけ。寂しいですよ」。財源だった入場料収入がないため、今月からホームページで寄付を募り始めた。

 10月に入ると、全国10地区で来春の選抜大会につながる地区大会が始まる。東北(宮城)、東京、四国(高知)では一般客を入れる予定だ。県をまたいで開催される大会。宿泊せず日帰りできるように大会日程を延ばすなど、見えない敵に苦心しながら準備を進めている。(山口裕起)