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 今月上旬にかけて台風に相次いで見舞われた北朝鮮で、被害復旧に向けた動員のために金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長名で出された公開書簡が、関係者の間で注目を集めている。北朝鮮の元高官や元外交官らは、「情を強調する表現ぶりなどから本人の手による可能性が高い」と見ている。

 北朝鮮は台風で大きな被害を受けた東北部の咸鏡南道と北道の復旧に首都・平壌の党員1万2千人を動員した。5日付の正恩氏名の書簡には、10月10日の党創建75周年と来年1月の党大会のために「首都の党員が被災地に駆けつけることをお願いする」と記されていた。唯一絶対で誤りのない「首領」とされる正恩氏としては、異例の言及といえる。

 書簡は「首都の温かい情で被災者を慰労し支援することを呼びかける」など「情」を強調。党員に対し「現地の人々を助けてあげているぞというそぶりは見せないように」とクギを刺しつつ、「一番心配なのは同志たちの健康。秋風を受けての徹夜はつらい。健康な体で首都に、むつまじい家に戻ってこなければいけない」と思いやりも見せた。

 北朝鮮の元外交官らによると、書簡の情緒的な表現から党宣伝扇動部によるものではなさそうだという。異例の書簡の背景について、首都の党員を動員せざるをえないほど切迫した状況だったとの見方もある一方、北朝鮮の元高官は「祖父の金日成(キムイルソン)主席や父の金正日(キムジョンイル)総書記も国民に手紙などの形で呼びかけることはあったが、北朝鮮の人々が共感しやすい情に訴えるなど正恩氏は統治手法に老練さも見せるようになっている」と語った。(ソウル=神谷毅)