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 関西電力が東日本大震災による経営難でカットした役員報酬を退任した18人に計約2億6千万円を補塡(ほてん)していた問題で、森詳介・元会長や秘書室(現総務室)など一部だけで「嘱託制度」の新設を決め、補塡に利用していたことが、関電関係者などへの取材でわかった。関電は取締役会や監査役会に補塡問題にからむ嘱託制度を諮っておらず、複数の元役員が取材に「退任時に制度を初めて知った」と証言した。

 関電は原発停止で赤字に陥り、電気料金を2013年と15年に2回値上げし、18年に震災前の水準に戻した。株主には12年から16年上期まで無配で、従業員の賞与ゼロは13年夏季から16年夏季まで続けた。12年から全役員の報酬の減額を始めたが、16年に「嘱託制度」をつくり、消費者や株主、従業員に犠牲を強いる中、同年7月以降ひそかに補塡していた。

 関電によると、退任した会長・社長は相談役、副社長以下の役員は子会社の役員、本社顧問といった嘱託に類似した職務に就く例が多い。だが、関電は値上げ審査で経営に直接関わらない顧問への報酬を電気料金の原価に含めていたことが批判され、当時14人いた顧問を減らした。当時、退任役員に対する嘱託制度はなかった。関電関係者によると、顧問報酬に対する批判を避けながら、減額した報酬を補塡するために嘱託制度を新たに設けたという。

 減額された元役員の一人は取材に対し、退任する際に「嘱託」として正式に委嘱され、約2年間にわたって1カ月約70万円の報酬を受け取ったと説明。嘱託については「関電を辞める時に言われて初めて知った」と証言した。原発関連の業務を担い、「(嘱託の)実態はあった」と説明した。

 別の元役員らは嘱託制度について「聞いたことがない」と話し、取締役会で審議されたことがなかったと認めた。さらに別の元役員は16年3月ごろ、当時会長の森氏に「ようやく報いることができそうだ」と言われ、嘱託の話が来たという。

 関電のコンプライアンス委員会(委員長・中村直人弁護士)によると、退任役員を嘱託にした理由について、秘書室作成の資料に「(外部に)漏洩(ろうえい)した場合、実質的な顧問制度であり、報酬の補塡と非難される」との文言があった。

 関電広報室は補塡問題の経緯について「当時の会長が秘書室に検討を指示し、最終的に決めた」と事実関係を認めている。