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 「カラン、カラン」と高らかな鐘が鳴ると子どもたちは駆け寄った。手には5円玉。「裸の大将」と称された画家の山下清のような半ズボンに麦わら帽子姿。アイスキャンディー売りは、かつては夏の風物詩だった。

 食品卸の松村グループ(群馬県高崎市新町)の松村武社長(78)は60年前、県立高崎商業高校を卒業したばかり。高崎市の北の榛東村の雑貨店20~30軒をバイクで回っていた。荷台にはアイスキャンディー。「うちのを置いてくれませんか」。何度も懇願するが、相手は「すでに仕入れ先があるから」とにべもなかった。足しげく通い、品物の陳列や掃除を手伝ったり、切れた電球を取り換えたり。お茶が出るようになった。2、3カ月後、ついに「お宅から買う」と言ってもらえた。

 仕入れ先は知人が勤める高崎市内の卸売会社で、販売は市外が条件だった。榛東村で約50軒を獲得、渋川市や旧群馬町へも広げた。

 朝5時に起床。ドライアイスをナタで切って、毎日、製品とともに補充した。「夏は店が遅くまで開いていたから、深夜まで働けた」

 1個5円時代の利ざやは0・5円。こつこつためた資金で2年後、市内に冷凍倉庫を建設。大量の仕入れができるようになった。大手メーカーのアイスクリームにも手を広げた。スーパーの業態が登場すると、いち早く売り込んで成約した。1970年代には、出回り始めたばかりの冷凍食品も扱い始めた。「試食したらうまかった。保存がきくし、家庭に普及する」と将来性を見込んだ。

 裸一貫で起こした会社は今や年商390億円。アイスクリームと冷凍食品で9割を占める。関東中心に全国24の拠点を持つ冷凍物流の一大企業に成長した。

 コロナ禍でも家庭の消費増大と猛暑で、売り上げが前年より15%伸びたという。「目標の400億円を突破できそう」と語る。ただ、会社の還暦祝いは3密回避で中止となった。松村社長の傘寿を兼ねて2年後に催す。(野口拓朗)

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