拡大する写真・図版戸田奈津子さん

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 映画字幕翻訳者の戸田奈津子さん(84)には「これがないと生きていけない」と明言するほど大切なものがあります。40年近く使い続けてきた手帳です。一見して、すり切れてボロボロになった感いっぱいですが、1年365日、どこに行くときも手放せないとか。そもそもこの手帳、映画好きなら誰もが知る映画界の「至宝」といっていい米国の映画監督からもらったものでした。

とだ・なつこ 1936年、東京出身。津田塾大学卒。70年に映画字幕翻訳者としてデビュー。「地獄の黙示録」(80年日本公開)をきっかけに売れっ子に。手がけた作品は「アマデウス」「フィールド・オブ・ドリームス」「タイタニック」など1500本以上。

 スティーブン・スピルバーグ監督からいただいた手帳です。世界中で大ヒットした彼の作品「E.T.」(日本公開1982年12月)の日本語字幕は私が担当しました。それもあって、日本のテレビの特集番組でハリウッドに取材に訪れた私を、スピルバーグ監督は歓待してくれ、その際に直接渡してくれたのです。

 手帳は英国製。「E.T.」公開記念に関係者に配られたもので、彼の映画製作会社「AMBLIN ENTERTAINMENT」のロゴがプリントされています。

拡大する写真・図版スピルバーグ監督からもらったシステム手帳

 いまも使い続けているのは、そんな貴重な思い出があることに加え、なんといっても、この手帳が大きく、分厚く、重いこと。私はそそっかしくて、小さな手帳だとすぐなくしてしまうんです。でもこの大きさ、重さだと、ハンドバッグに入れて持ち歩いていて、手帳をどこかに忘れたら、バッグがずっと軽いので、すぐ気づくでしょ。重いというだけで、私にとっては価値があるんです。

 予定表への記入はとてもシンプル。時間と相手の名前を書くぐらいかな。毎年、銀座の伊東屋で新しいのを買って取り換えます。銀行カードやクレジットカード、交通系カードなど生活に必要なカード約20枚も入れています。生活に必要なものはこの手帳に集中させてあるんです。だからこんなに分厚いの。この手帳がないと、明日死んでしまう。お金も引き出せないし、電車にも乗れないから。

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