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 新型コロナウイルス対策に、向こう側が透けて見えるほど薄い紗幕(しゃまく)で客席との間を隔てた常設舞台での演劇公演を提案している枝光本町商店街アイアンシアター(北九州市八幡東区)が24日、試演会を開いた。北九州市を拠点とする劇団が紗幕を上手に生かした元気いっぱいの演目を披露し、客席からは笑いが漏れた。

 紗幕をかけた舞台は、コロナ禍で公演が中止になるなど劇団が苦境に立たされる中、観客も安心して見ることができる公演の場を提供しようと、劇場の運営責任者、森田正憲さん(41)が考案。地域の人や観劇の経験があまりない人に足を運んでもらいたいと、笑いが盛りだくさんの作品を上演する演劇カンパニー「有門正太郎プレゼンツ」に試演会への出演を依頼した。

 演目は、同カンパニーの過去の作品のオムニバスだった。プロローグでは、紗幕に気付いた出演者が「この白い幕でお客さんの顔が見えない」「外した方がいいんじゃない。外せ! 外せ!」と大騒ぎ。そこでカンパニー主宰者の有門正太郎さん(45)が「大人の事情を考えろ。この白いのがあると、何か感染しにくいんじゃないかという安心感につながるんよ」とたしなめる。観客が紗幕に抱く違和感をぬぐい去る演出だ。

 続いて、紗幕をスクリーンに見立ててタイトルや出演者、スタッフの名前が映し出された。本編が始まると、薄い幕の向こうにいる俳優の表情も動作もせりふもはっきり伝わってきた。

 舞台と客席は2メートル、客席間は1メートル以上の間隔を空けて、入り口では検温と手指の消毒を徹底。観客はみなマスクを着用し、開演前の客席にはかすかな緊張感もあった。だが、歌あり、踊りありのコミカルなストーリーと演技に次第に空気がほぐれ、自然と笑い声が漏れるようになった。

 有門さんは7月、アイアンシアターに演劇人有志を集めて、コロナ禍が続く中での演劇のあり方を話し合った。若手が多い参加者からは「受験勉強で中断していた演劇を大学に入って再開しようと思っていたが、通学すらままならない」という悩みも聞いた。だから、この日の出演者はほとんどを大学生にした。

 舞台に立つ出演者の喜びや、次第に客席が湧いていく手応えを感じたという有門さん。「僕らもお客さんも、この状況に慣れていくしかない。その中でどれだけ面白いものを作れるか。挑戦していきたい」(吉田啓)

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