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 視覚と聴覚の両方に障害がある盲ろう者向けの通訳・介助者を養成する講座。昨年の全8回42時間のコースを修了した人たちが、より実践的な内容を学ぶ「選択科目コース」が9月、岡山県津山市で始まった。触覚だけが頼りのため、手などの接触は欠かせない。コロナ禍でのより安心安全な通訳・介助を模索し、講座は進められる。(中村通子)

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 「ひさしぶり~」。市総合福祉会館(津山市山北)の講義室に、受講生たちが次々集まった。2年目となるコースは当初6月開講の予定だったが、コロナの影響で3カ月遅れた。受講生は9カ月ぶりの再会だ。

 昨年6~12月にあった「必修科目コース」は11人が修了。うち記者の私も含めた9人が、引き続き参加する。保健や介護の仕事をしている2人が今年の受講を断念した。業務上、コロナ感染のリスクを少しでも避ける必要があるためだという。

 初回は、盲ろう者とのコミュニケーション方法の復習に専念した。9カ月間のブランクで、みんな、いろんなことを忘れている。

 まずは指点字。盲ろう者の指に、点字を打ってコミュニケーションをする方法だ。受講生が2人1組になって、互いに指点字を打ち合った。

 左右の人さし指・中指・薬指の第一関節辺りをポンポンとごく軽くたたく。

 いきなり戸惑った。どの指をたたかれているのか、感じ取れないのだ。打つ方も点字の50音表を見ながらなので、たどたどしいうえ、間違いもあり、文意がつかめない。指に気持ちを集中しすぎたためか、わずか10分ほどの実習で、頭がくらくらした。

 次は手のひらで伝える触手話と文字書きを復習して、おやつタイムに。講師たちが全員分のアイスクリームを用意してくれた。

 といっても、簡単にはありつけない。アイスは全て味も種類も異なる。アイマスクと耳当てを付けて盲ろう状態になり、相方が手のひらに伝えてくれる情報をもとに選ぶのだ。

 相方の説明は「あずき」。てっきり「あずきバー」だと思い選んだら、あれっ。「あずきもなか」だった。おいしくいただいたが、なんとなく釈然としない。盲ろう者は、その「がっかり」が、日常なのかもしれない。甘いクリームをなめながら、正しくイメージを伝える情報提供の重要性をかみしめた。

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 触り合わなければ意思疎通が出来ない盲ろう者の通訳・介助は、コロナ禍で断絶の危機にある。その中で、2年目の開講を決めた村上京子・岡山盲ろう者友の会事務局長に思いを聞いた。

 新型コロナウイルス感染が広がり、開講するかどうか、とても悩みました。

 ですが、ただでさえ通訳・介助員が手薄な県北で、貴重な人材育成の機会を逃すのは惜しい。県に相談し、感染対策を十分取ったうえで、年度内に修了できるぎりぎりの9月に開始すると決めました。

 コロナ禍の苦労はたくさんあります。2年目のコースで学ぶ先天性の盲ろう者・児の介助や意思疎通では、県外から当事者を講師に招く予定でした。しかし感染拡大防止の観点から、県からは「講師はできるだけ県内の盲ろう者で」と指示されました。せめて映像教材を、と思い探しているのですが、まだ適切なものは見つかっていません。

 また、本来なら欠席者は修了できませんが、今回は発熱など体調不良時の欠席は認め、実習の補講など柔軟に対応する予定です。

 いろいろ問題はありますが、それでも、やはり開催は必要だったと思います。通訳・介助員が足りないため、盲ろう者たちは外出機会や情報保障が十分受けられていないのが現実です。令和になったことも最近まで知らなかった人がいるほどで、コロナのことも、果たして彼らに伝わっているのか、心配しています。

 そんな彼らの力になれる人を一人でも増やしたい。参加者の皆さんには体調をしっかり管理して頑張ってもらいたいです。