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 山形県内の最上川やその支流などが氾濫(はんらん)した7月末の豪雨から2カ月が過ぎた。復旧が進む一方で、浸水被害を受けたため、いまだ営業を再開できない温泉旅館があり、これからの収穫に不安を抱く農家もいる。

 最上川から水があふれた大江町の左沢地区。浸水被害を受けた川沿いの住宅街には泥やごみも見当たらず、日常を取り戻したかのように見える。しかし、同地区の温泉旅館「あてらざわ温泉湯元旅館」は営業休止したままだ。おかみの柏倉京子さん(65)は「住宅地から旅館に目を向けると、2カ月前から時間が止まっているようです」。

 旅館では、川に面した建物が顔の高さまで浸水。ほかの建物も足元まで水につかった。ボランティア延べ100人の力を借りて、8月上旬に建物内に流れ込んだ泥をかき出し終えた。泥まみれになった家具などを処分し、床板の張り替えもほぼ終えた。だが浸水した、温泉をくみ上げるポンプなどは業者の点検が必要なため、まだ動かせない。

 柏倉さんは「収入はコロナ禍で減り、さらに水害で途絶えたまま」と話す。政府の観光支援策「Go To トラベル」などで人出が戻りつつある観光地もあることから「周囲の状況を見るのが二重にもどかしかった」という。

 旅館では現在、床板の上にフローリングを張る作業中。来月初めには温泉をくみ上げるポンプなどを業者に点検してもらう予定だという。「一歩一歩進んでいることを実感している。前を向いてなんとかこの温泉旅館を守っていきたい」と柏倉さん。10月下旬の営業再開をめざしている。

 最上川の氾濫で多くの住宅や農地が浸水被害を受けた大石田町。同町豊田の農家、行沢清一さん(73)の畑では、水害前に種をまいた落花生が間もなく収穫期を迎える。ただ畑が浸水した影響で土が硬くなり、実の成熟具合などに不安が残るという。

 周囲の農家では、スイカなど収穫間際の作物が水につかって、廃棄を余儀なくされたという。行沢さんはこうした農家を気遣いつつ、「収穫できるだけでもうけものだと思っています」と話した。(鷲田智憲)

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 県の今月10日時点のまとめによると、7月末の豪雨による住宅被害は26市町村で729棟に及んでいる。

 内訳は、全壊1棟、大規模半壊7棟、半壊55棟、一部破損3棟、床上浸水143棟、床下浸水520棟。被害が多かった市町村は、河北町140棟、中山町126棟、大石田町99棟、村山市68棟など。

 豪雨で発生した災害廃棄物は同日時点で、処分した分と仮置き中のものを合わせて、大石田町2547トン、河北町1797トン、村山市1005トンなどとなっている。

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