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 部落解放同盟と同盟員ら248人が川崎市の出版社と経営者らを相手取り、部落地名リストの復刻出版の禁止やネット上に掲載したリストの削除などを求めた訴訟で、原告と被告双方の尋問が28日、東京地裁であった。原告らは「リストの公開によって部落差別が助長される」として出版禁止や削除を求めた。

 出版社は2016年2月、戦前の調査報告書「全国部落調査」を復刻出版して販売すると告知し、ネット上に同和地区の地名リストを掲載した。解放同盟側の申し立てを受け、横浜地裁などが同年3~4月、出版禁止やリスト削除を命じる仮処分を決定。同盟側は4月に提訴していた。

 尋問はこの日を含め、8月末から3回にわたり行われ、同盟員らが差別への不安を口々に訴えた。

 同盟の片岡明幸・副委員長は、1970年代に被差別部落の地名リスト「部落地名総鑑」が販売された際も、「結婚や就職の際に相手の身元を調べ、被差別部落出身者に対する婚約破棄や不採用とする差別目的に使われた」と指摘。今回の地名リストによって「再び同和地区が暴かれ、差別が助長される」と強調した。

 関東出身で東京都内に住む原告男性は、地域や学校、SNSなどでも、「自ら被差別部落出身と明かすことは少ない」と説明。「部落問題を知らない人や差別を肯定する人もおり、運動に理解がある知人以外には打ち明けていない」とした。リストについては「出身情報が確認されて身元を暴かれ、家族の就職や結婚など人生で大切な場面を台無しにされてしまう」と不安を訴えた。

 これに対し、出版社側は「原告らの名は解放同盟役員として雑誌や書籍にも出ている。同和地区の特定は学術・研究目的。出版禁止は学問や表現の自由を制限するものだ」などと主張した。

 リストをめぐっては、東京法務局が16年3月、「差別を助長し、人権擁護上看過できない」として、リストの削除を説示。この訴訟を背景に、同年12月には「現在もなお部落差別が存在する」として、国会で部落差別解消法が成立した。

 一方、出版社がネット上に掲載したリストは別のサイトに移されて存続。出版禁止の仮処分決定後、同社は復刻版とほぼ同じ内容の書籍を題名を変えて販売し、各地の被差別部落で撮った写真や記事をネット上に掲載している。18年11月には解放同盟などを相手取り「仮処分により部落の地名を研究し発表する学問の自由や表現の自由を侵害された」として東京地裁に反訴を起こしている。(編集委員・北野隆一