拡大する写真・図版イラスト・中島美鈴

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 時間内に仕事が終わらない原因を掘り下げていきます。朝寝坊をして会社に間に合うかギリギリのとき、あなたはどうしますか? 克服の鍵は、優先順位の付け方にありそうです。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

精神論で突っ走る

 前回から引き続き、制限時間内に仕事を終わらせる方法についてご紹介します。

 前回は制限時間内に仕事が終わらない原因を五つのタイプに分けてご紹介しました。そのうち、今回は、制限時間内に仕事が終わらない原因のタイプ「①時間内に終わらせる方法を選択できずに精神論で突っ走るタイプ」について、詳しくご紹介します。

 このタイプは、「事前に冷静に計画を立てるなんて時間はもったいない。そんな暇があるのなら、1秒でも早く手をつけるべきだ!」と、見切り発車をするタイプです。これまでも、気合で乗り切ることができたのでしょう。

こんな状況になったら…

 みなさんが仕事に遅刻すれすれの時間に目覚めてしまった朝を思い浮かべてください。その時、みなさんはどちらのタイプですか?

 A「いつもと同じように、朝ごはん、身支度を済ませようと急ぐ」

 B「今日は朝ごはんとメイクはあきらめようと、着替える」

 Aのやり方で間に合えばよいのですが、間に合いそうにないのにAをしているとしたら、完全にこの①のタイプに該当します。

 Bは、時間内に終わるようなやり方に切り替えています。そのため、計画に無理がありません。Bは、現実をすぐに受け入れて、どれが最低限必要かを見極めています。いつまでも「なんで寝坊しちゃったんだろう! 私のバカ」、なんて原因追求をすることもなく、「この一連の朝の準備の最低限のゴール」を見据えています。 おなかが減っていても、ノーメイクでも、ひとまず体を職場に向かわせれば、クビにはならないという優先順位です。

 このぐらい単純なケースですと、優先順位もわかりやすいのですが、これが仕事の場面になるとちょっと複雑です。

議事録が苦手だと…

 会議の議事録や出張報告書を書くのに時間のかかる人はいませんか? 議事録は、逐語録ではなく、要約したものだとします。これは、「要約」する力が必要になります。つまり、仕事の「どこが重要な点をわかっている」必要があるのです。

 発達障害の傾向のある方からご相談で、特に「議事録」が苦手ということをよく耳にします。重要な点がわからないからこそ、どこを省略していいのかわからないので、削れない。その結果、報告書も長くなるし、仕事もおそらく余計なことまでしてしまうことになります。

 「仕事の要点なんて、仕事をしているうちに、体得していくものだ」

 そんなものかもしれませんが、体得が数年たってもできないな? 周りの人より自分はどうも要領を得ないようだな? ずいぶん回り道しているようだな? と自覚のある方は、戦略を変えてみませんか。

 聞けばいいのです。仕事の依頼主に、この仕事の最低限必要な要素は何でしょうか、と。

 できれば箇条書きにするといいでしょう。

モノの力、おそるべし

 仕事の内容によっては、現物を目の前に打ち合わせできれば、安心です。

 前回のリョウさんのPTA新聞の記事のレイアウトを考える作業では、リョウさんは前年度の新聞を机に置いてみるとよいでしょう。前例のあるものならば、それをまずは眺めてみると仕事のゴールがつかみやすくなるのです。これのまねをしていれば、だいたいOKです。

 時間管理に関する支援をしていると、単純なことですが、この「仕事のゴールになるものを机の上に出す」という作業をしない人が意外に多いのです。そのぐらい頭の中でわかっている、という認識があるのだと思います。でも、現物の力は強いのです。無駄にゴールのイメージが広がって収拾がつかなくなるという事態を避けられます。

 仮に上司が「前年度のを元に、もう少し修正してみて」というあいまいな指示を出したとしても、現物が手元にあれば、どの部分をどのように修正するのかについて具体的に打ち合わせることができます。美容室でヘアカタログという現物を見ながら美容師さんと丁寧に打ち合わせるイメージをもつとよいでしょう。

 ◇このコラムの筆者があなたの先延ばし癖の改善を応援します。毎週土曜の朝、オンラインで実施です。詳細はこちらから。「働く人のための時間管理グループレッスン」(http://ptix.at/Ou2Bjb別ウインドウで開きます

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。