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 企業は株主の利益のためにある――。グローバル経済を席巻した米国流の株主資本主義に、パンデミックという逆風が吹き付けている。スイスの街に世界のリーダーが集い、グローバル経済が向かう先を討議してきた「ダボス会議」。その生みの親、世界経済フォーラム(WEF)のクラウス・シュワブ会長は、株主だけでなく、従業員や顧客、地域などの利害関係者(ステークホルダー)にも配慮した新たな経済を提唱する。低成長が続く日本にこそ、そのヒントがあるという。オンラインでスイスと結び、「ステークホルダー資本主義」の可能性を聞いた。

主犯は株主資本主義なのか

 ――気候危機や格差拡大など、世界はコロナ危機前から重い課題を抱えていました。株主資本主義の隆盛は、これらの問題の「主犯」なのでしょうか。

 「要因の一つであることは間違いありません。ただ、忘れてならないことがあります。コロナ危機前の経済システムは、とりわけ2008年の金融危機前、様々な恩恵をも世界にもたらしたということです。たとえば絶対的貧困の減少。私がWEFを設立した1971年に約40億人だった世界の人口は、いま80億人に迫ります。にもかかわらず絶対的貧困の中に置かれた人の数は減り、寿命なども改善しました」

 「しかし便益をもたらしたシステムであっても、古くなれば新たな現実に合わせて作りかえる必要があります。株主だけでなく社会に配慮した経済のあり方を、どう再定義するかが問われています」

 ――コロナ危機で企業は余力を失いました。ステークホルダー重視への転換も難しくなったのでは。

 「そうは思いません。元からステークホルダー重視にかじを切っていた企業ほど、今回の危機への備えがかなりうまくいきました。(自社株買いなどで)株主にだけお金をはき出すのではなく、将来に投資してきたおかげです。株主以外のステークホルダー、とりわけ従業員と顧客をないがしろにすれば、企業の最大の資産である信頼を損ないます。ステークホルダー資本主義は強靱(きょうじん)で魅力的な企業をつくり、なにより長期的な利益を生み出します」

ステークホルダー資本主義 
 株主だけでなく従業員や取引先、地域、地球環境などすべての利害関係者(ステークホルダー)への貢献をめざす企業経営や経済のあり方。株主の利益を最優先する「株主資本主義」と対をなす。米大企業の経営者でつくる「ビジネス・ラウンドテーブル」が2019年、株主資本主義からステークホルダー資本主義に軸足を移すと宣言して注目を集めた。投資の基準としてESG(環境、社会、ガバナンス)を重んじる動きとも共鳴する。2020年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のテーマも「ステークホルダー」だった。

 ――企業の顧客として存在感を増す若い世代ほど、「今の形の資本主義」への反発が強まっています。

 「ミレニアル(1980年代前半~90年代後半生まれ)やジェネレーションZ(90年代後半~2000年代前半生まれ)と呼ばれる世代ですね。自然を壊したり、社会に対して責任ある振る舞いができなかったりする企業を、彼らは好きにはなりません。企業に短期的思考を強いる株主資本主義と、長期的に考えることが必要なステークホルダー資本主義。長い目で見てどちらが成功するか、明らかでは」

拡大する写真・図版2020年1月、スイス東部ダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で、トランプ米大統領と握手するシュワブWEF会長(右)=WEF提供

世界が日本に学ぶべきは

 ――いまも大規模な人員削減が進んでいます。少なくとも短期的には、株主とほかのステークホルダーの利益はぶつかります。

 「株主に報いつづける一方で、社会やほかのステークホルダーへのコストを維持するバランスをどうとるかが大事です。この点で、日本はとても良い例です。多くの企業は大変なプレッシャーにさらされるなか、(法的には)人員削減が許されていたとしても、従業員を将来のために抱えておこうとするからです」

 ――確かに日本はステークホルダー資本主義に親和性があります。とはいえ、長く停滞が続いたせいで、「日本化」は世界の当局者にとって避けるべき事態とみなされています。

 「世界が日本に学ぶべきは、い…

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