特別養護老人ホームやグループホームといった高齢者施設の新型コロナウイルス対策として、政府はPCR検査態勢を大きく見直します。感染拡大地域では、職員や入所者全員について定期的に検査する方針を8月末に示しました。感染すれば命の危機に直結するためですが、各保健所の判断にもよることから、地域によってばらつきが出る可能性があります。
高齢者施設では14日現在、170件のクラスター(感染者集団)が発生している。高齢者は重症化のリスクが高く、施設で感染した人が死に至る例が多いことから、政府は8月28日、感染拡大地域にある高齢者施設を対象に「全員・定期的」な検査を打ち出した。
政府はこれまでも検査対象を拡充してきたが、感染拡大に追いつかず、しばしば対応が後手に回った。
高齢者施設での公費によるPCR検査の対象は元々、感染症法などに基づき、原則として濃厚接触者までとされてきたが、実際には濃厚接触者以外の入所者や職員の感染が明らかになるケースが続発した。
京都市の介護付き有料老人ホームでは、4月中旬に入所者が新型コロナに感染したのをきっかけに、5月にかけて濃厚接触者以外の入所者や職員の感染も判明した。最終的には13人が感染するクラスターとなった。施設を経営する「ケア21」で感染症対策を担う白井良孝総務人事課長は「保健所には、濃厚接触者以外についてもPCR検査を希望したが、検査してもらえないまま感染が広がった。対応は後手後手だった」と悔やむ。
濃厚接触者しか検査認めず
高まる不安の声を受け、厚生労働省は8月7日、高齢者施設で1例でも感染が出た場合、濃厚接触者ではなくても入所者らにPCR検査を公費で実施できるとの方針を示した。もっとも、この方針が示された以降も、検査への対応は自治体によってばらつきがあった。
ケア21が経営する神奈川県の認知症グループホームと大阪府の訪問介護事業所では、職員や利用者が新型コロナに感染したが、保健所は濃厚接触者へのPCR検査しか認めなかった。事業所は全入所者と職員へのPCR検査を自腹で実施したという。白井さんは「自治体によって対応がばらばらだと過去の教訓も生かせず、対策の遅れにつながりかねない」と指摘する。
別の法人が経営する関西の有料老人ホームでは、9月に職員の新型コロナ感染が判明。濃厚接触者は公費でPCR検査を受けたが、それ以外の職員と入所者は施設が自費で検査したところ、新たな陽性者が見つかったという。
政府が8月末に「全員・定期…

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