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 1960年代、黒人差別への抗議が広がった米ニューヨーク・ハーレム。若き日のフォトジャーナリスト・吉田ルイ子は持ち前の笑顔で街に飛び込み、カメラには、レンズを向けた暮らしの営み、子どもや女性の笑顔、そして誇りをもった黒人として目覚めていく人々のまなざしが収められていた。一方で、その著書には家族や自らの差別意識と向き合い、葛藤する姿も描かれている。

拡大する写真・図版1960~70年代初め、ハーレム。子どもたちを撮るのが好きだった吉田ルイ子=中澤まゆみさん提供

 黒人の子どもの、生き生きした表情。きっかけは一枚のモノクロ写真だった。

 アーティストの吉田茂さん(77)が70年ごろ、ニューヨーク滞在中に知人の誘いで吉田ルイ子(86)の自宅を訪ね、壁に貼ってあった手札サイズの写真に釘付けになる。ハーレムで撮ったという。「黒人といえば貧困や差別など暗い話題を思い浮かべがちな、こちらの目を開かせる魅力がありました」

自身の中の差別意識も直視

 民放アナウンサーなどを経て61年に渡米、コロンビア大大学院で学んだ吉田は、活動家の白人学生と結婚し、ハーレムの低所得者団地に暮らし始める。公民権運動とその後の黒人運動の急進化でハーレムは危険な場所とみられていたが、吉田は内側から、隣人の写真を撮りためていた。

 展覧会の企画を持ちかけると吉田は快諾し、帰国。子どもや女性、街の普段着の光景、黒い肌をさらすモデル、黒人運動の指導者……。多彩なスナップをそろえて、72年、東京・渋谷の百貨店で「ハーレム――ブラック・イズ・ビューティフル」と題した個展は開かれた。

 日本人には遠い話題、との予測を裏切り、注目を集めた。白人中心の基準とは違う美しさ、日常風景の新鮮さ、ベトナム反戦や女性、環境など市民運動が起きた時代の機運も背景にあった。編集者の石川公枝さん(故人)が熱心に出版を勧め、同年のうちに出たのがルポルタージュ『ハーレムの熱い日々』だ。

 報道写真家の石川文洋さん(8…

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