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 コロナ禍が、土地取引価格の目安となる基準地価に影響を及ぼしている。29日の神奈川県の発表によると、地価の平均変動率(いずれも対前年)は、住宅地が県全体で3年ぶりに下落(0・9%)に転じた。商業地と工業地は、県全体では8年続けて上昇したが、上げ幅は大きく縮んだ。(茂木克信、松沢奈々子)

 調査は7月1日時点。住宅地646地点、商業地223地点など計927地点について県が調べた。

 このうち住宅地は、前年から継続した634地点のうち6割強(395地点)が下落した。コロナ禍で不動産取引が停滞したほか、先行きの不透明さから需要が減ったことが響いた。上昇は137地点、横ばいは102地点だった。

 そうした中、横浜市中区の「山手町247―6」は4年ぶりに上昇率(4・0%)が1位に。価格の高い順でも1位で、こちらは9年連続。価格の上位10地点の顔ぶれは前年と変わらず、高級住宅地の人気の根強さがうかがえる。

 また、海老名市の「上郷1―19―25」の上昇率は前年から0・7ポイント縮んで2・7%だったが、順位は40位から6位に急上昇した。最寄りの小田急海老名駅からは約1・1キロあるものの、商業施設「ららぽーと海老名」に近く、再開発への期待感が押し上げた。

 上昇率7位の横浜市神奈川区の「神大寺3―18―25」は、市営地下鉄ブルーライン片倉町駅への利便性から、8位の同区「松見町1―20―1」はJR大口駅と東急東横線妙蓮寺駅の2駅を使えることから、それぞれ順位を大きく上げた。

 逆に下落率では、上位10地点のうち七つを横須賀市の地点が占めた。1位は三浦市の「尾上町6―13」。下げ幅は7・3%で、前年より0・7ポイント広がった。

 自治体別では、3政令指定市いずれも市全体では上昇から下落に転じた。横浜市はマイナス0・4%(前年1・1%)、川崎市はマイナス0・1%(同1・7%)、相模原市はマイナス0・1%(同1・0%)。3市の中でも交通の便がいい地域には上昇地点もみられるが、昨年10月の台風19号で浸水被害が出たJR武蔵小杉駅(川崎市中原区)近くの地点(上丸子山王町2―1319―4)は、下げ幅が1%を超えた。

 その他の16市の平均変動率も、藤沢、大和、海老名の3市が横ばいだった以外は下落した。下げ幅が大きかったのは、南足柄市3・7%▽三浦市3・6%▽横須賀市2・9%――など。

 町村部は下落基調が顕著で、下げ幅は大磯、二宮、中井、山北、真鶴、愛川の6町が3%以上となった。

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 商業地は、県全体では0・2%(前年2・5%)上昇した。昨年後半の上昇分は、コロナ禍を受けて今年前半にほぼ消えた。前年から継続した223地点のうち、4割近く(85地点)が最終的に下落した。観光業や飲食業の打撃は大きく、賃料の減額交渉やテレワークの広がりもあり、先行きは見通せない。

 そうした中、価格のトップは5年連続で、商業施設「横浜モアーズ」がある横浜市西区の「南幸1―3―1」だった。価格は1平方メートルあたり1480万円(前年1450万円)。以下、同区「南幸1―12―7」の同800万円(同792万円)▽同区「北幸1―8―4」の同466万円(同458万円)と続いた。

 上昇率の1位は3年続けて、同市神奈川区の「鶴屋町2―16―6」で5・9%(同25・3%)。2位の同市中区「本町4―35外」は、移転した市役所新庁舎に近く、順位を前年の13位から大きく上げた。

 自治体別では、横浜市の上昇率は0・9%(同3・8%)、川崎市の上昇率は1・1%(同4・8%)にそれぞれ縮小。相模原市はマイナス0・8%(同1・4%)と下落に転じた。

 工業地は、県全体で1・5%(同2・9%)上昇した。一方、昨年9月に台風15号の高波で護岸が壊れ、海沿いの工場に浸水被害が出た横浜市金沢区は、前年の7・3%の上昇から一転、2・5%下落した。

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 神奈川県内の基準地価がコロナ禍による下落圧力を受ける中、横浜市で人気の観光地「山手・中華街エリア」で明暗が分かれた。

 地下鉄みなとみらい線の元町・中華街駅からアメリカ山公園を抜け、横浜外国人墓地を右手に坂を上がる。横浜地方気象台を過ぎると、高級住宅地として知られる中区の山手エリアに着く。住宅地の価格順と上昇率順で「2冠」になった「山手町247―6」は、この一角にある。

 周辺にはインターナショナルスクールや観光スポットの西洋館があるが、平日は人通りが少なく、落ち着いた雰囲気が漂う。立ち並ぶ邸宅の玄関には契約した警備会社のシールが貼られ、駐車スペースは車を数台置ける広さがある。瀟洒(しょうしゃ)な建物も目を引く。

 不動産鑑定士の小林一寿(かずひさ)さんは「売り物件が出ると、土地と建物で数億円になるエリア。『山手ブランド』で生活したい富裕層が需要を支え、地価が上がり続けている」と話す。

 同じく、元町・中華街駅が最寄りの横浜中華街。中華街大通りの善隣門付近が、商業地の価格順で5位(前年4位)の「山下町154―6外」だ。地価は前年の9・1%上昇から一転、2・9%下落した。

 9月の4連休明けの昼時、周囲を歩く人はまばらだった。近くの中国料理店「中国飯店」の総支配人の梶恒翁(つねお)さんは「6月に営業再開した後、売り上げは前年同期比で8割減。宴会需要が見込めないのが苦しい」。地価の下落については「2・9%の下げでよくもった。来年以降はどうなるか」と不安をみせた。

 別の飲食店の店長によると、9月の4連休は人出が戻り、一息ついたという。だが「生き残れるのは多角経営してきたところだけ。うちも客足が戻るには2年くらいかかるだろう」と語った。

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