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 ふるさと納税制度により、巨額の財源流出に悩まされている川崎市は29日、返礼品を10月1日からリニューアルすると発表した。流出額が多い「負け組」から脱却しようと、昨年から返礼品競争に加わったが、実際には流出が拡大した。新たな返礼品には市の戦略転換がにじんでいる。(大平要)

不交付団体ゆえに最多流出

 新たに追加した返礼品は15事業者の49品。同市幸区の音響機器メーカー「S(エス)’NEXT(ネクスト)」の高級ヘッドホン(寄付額100万円)やイヤホン(同5千~40万円)、同市高津区の金属加工メーカー「今野工業」のステンレス製オーブン燻製(くんせい)機(同11万円)など、地元の中小企業が開発、製造する工業製品も加えた。川崎フロンターレのユニホームとタオルマフラーのセット(同1万7千円)、地元産のクラフトビールや菓子、ガラス切り子も並ぶ。

 10月1日正午以降、トラストバンク「ふるさとチョイス」やJTB「ふるぽ」から申し込める。

 市は昨年秋、返礼品をそれまでの19から189に大幅拡充した。人気のJリーグ川崎フロンターレの全選手のサインが書かれたユニホーム(寄付額10万円)は、受け付け開始から1日で30着が「完売」した。

 2019年度のふるさと納税の受け入れ額は3億7300万円。大半は亡くなった市民からの遺贈で、市外からの受け入れは3700万円にとどまった。発表時に福田紀彦市長が打ち上げた「1億円」に、遠く及ばない。

 一方で、これに対応する流出額は63億円で、前年度から約7億円増えた。全国的にはふるさと納税の金額が頭打ちになっている中だけに、市役所内では「大々的に返礼品拡充を宣伝して、(市民にふるさと納税の存在を再認識させる結果となり)やぶ蛇になった」という陰口も聞こえた。川崎市は政令指定市で唯一、国から地方交付税交付金を受け取ることができない「不交付団体」。総務省の資料によると、流出額は横浜、名古屋、大阪の3市に次いで4番目だが、この3市は流出額の75%が交付税で穴埋めされる仕組みのため、実質的な流出額は川崎市が最も大きくなる。

「肉や魚じゃないとダメ」は誤解

 ふるさと納税は、自分が住んでいない自治体に寄付をすることで、返礼品を受け取る制度だ。寄付額から2千円を引いた金額分、納税額が軽くなる。たくさん寄付できる人ほど、多くの返礼品を受け取ることができ、「高所得者優遇」だと批判されている。

 また、本来市民サービスに使われるはずのお金が、返礼品にまわることも問題視されてきた。川崎市の流出額63億円は、園児3800人分の保育園の運営費や、市内の半分にあたる36万世帯分のごみ収集・処理費に相当するという。

 市は国に対し、寄付額の上限を設けることなど、制度の改善を求めてきた。だが、ふるさと納税は、菅義偉首相が総務相時代に提案した肝いりの政策として知られる。福田紀彦市長はこれまでの会見で「(菅首相は)制度を分かっているのだから(改善を)期待している」と語っているが、見通しは立たない。

 市は今後も、流出額が増えていくとみている。そこで、「市内の中小企業の製品を返礼品にすることを通じて、企業支援を進めていこう」と割り切って考えることにした。市資金課の土浜義貴課長は「中小企業のみなさんに、販路開拓の宣伝手段に利用してもらう。市内経済が潤い、企業がもうかれば、税収増につながる」と話す。

 市は今後、返礼品にふさわしい製品があれば、随時追加することにした。「返礼品は肉や魚じゃないとダメだと誤解している人もいる。ふさわしいものがあればどんどん相談して欲しい」と地元企業に対して呼びかける方針だ。