【動画】長野新幹線車両センターで初の避難訓練=遠藤和希撮影
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 昨年10月の東日本台風で千曲川の堤防が決壊し、計10編成の新幹線が水没した北陸新幹線の長野新幹線車両センター(長野市)で29日、JR東日本が車両を避難させる訓練をした。総額150億円を超えた被害を未然に防ごうと、台風対策を変更。手順通りに避難できるか検証した。

 同社は今年5月、センター近くの川の水位や雨量などを元に、2段階の警報を鳴らして新幹線を避難させる独自の対策を決めた。最初の警報で運転士らをセンターに移動させ、氾濫(はんらん)危険水位超えを基準とする次の警報で最寄りの駅などに車両を移すというものだ。被災当時は避難の基準はなく、センターが台風の進路上にあれば避難させることもあった程度だった。

 この日の訓練では、新幹線の運行が継続していると想定。最初の警報後、運行計画の変更や運転士らの手配などの手順を確認し、次の警報から1時間20分かけて1編成を長野駅に出発させた。

 ただ、実際にはさらに時間がかかると見込まれており、センターから10編成を避難させる場合、同社の試算では約7時間かかるという。担当者は「新幹線は車を動かすように避難できない。早め早めの避難につながるように今後も訓練を重ねたい」と話す。

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 昨年も取り急ぎ高架に逃がせばよかったのでは――。そんな疑問を持っていたが、すぐには逃げられない新幹線特有の事情があった。

 同社が今年5月に決めた対策では、川の水位が「避難判断水位」を超えるような状況になれば、避難準備を求める警報が同社やセンターで鳴る。担当の運転士らが車でセンターに移動して待機。「氾濫危険水位」のような状況で次の警報が鳴ると実際に車両の移動を始める。

 ただ、運転士がとりあえず手動で動かせばいいというものではない。

 新幹線は信号や分岐など複雑な運行計画で動いており、避難する車両も含めて全体の計画を立て直さなければならない。終電後や計画運休中でも他の避難車両を含めた計画を立てる必要があり、「ここに時間がどうしてもかかる」(同社)そうだ。また、センターから本線に延びる線路は1本。10編成あれば順番待ちの時間も出てくる。

 同社の担当者が「被災前に台風で警戒していたのは強風だけ」と話すように、センターの水没は想定外だった。それだけに、今後はJR各社で「早めの避難」が定着しそうだ。

 県内に大雨特別警報が出た翌日の7月9日早朝、同社は5月に決めた手順通りに2編成を長野駅に避難させた。また、昨年水没した10編成のうち2編成を所有していたJR西日本は、特別警報級だと警戒が呼びかけられた今月の台風10号の襲来前、初めて福岡県の車両基地から岡山、広島両県に車両を移動した。

 JR西の担当者はこう話す。「災害の激甚化に合わせて対応する必要性に迫られている」(遠藤和希)

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