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 庁舎が備える「広場」や「庭」での「政治的表現」を規制する自治体が増えている。各自治体は特定の政治主張と結びつけて見られることを避け、「中立を保つため」と説明するが、肝心の「政治的表現が何なのか」ははっきりしない。

 朝日新聞の取材では、そうした規則や内規があったのは、さいたま市緑区、神奈川県鎌倉市、長野市、広島県福山市、徳島市の少なくとも5市区。徳島を除き、ここ5~6年の間に規制を始めていた。

 鎌倉市では、金沢市と同じく、集会の不許可をめぐって市民団体が反発する事態が生じていた。

 鎌倉市によると、2014年、市民や職員が庁舎内で物を売ったり、ポスターを貼ったりする際の審査基準を定め、「特定の思想、政治的信条、宗教の普及を目的とする行為」を禁じた。もともと、庁舎内で市議らが政党機関紙の購読を呼びかけるのを規制する目的だったという。

 この基準を市は18年、庁舎にある約240平方メートルの「前庭」にも適用し、市民団体「鎌倉ピースパレード」が申請した護憲集会での使用を不許可とした。市側の説明では、団体が改憲反対を訴える行進の集合地として前庭を指定したチラシをSNSなどに掲載したところ、「市は賛同しているのか」といった電話が複数寄せられたという。

 ピースパレードの小堀諭共同代表(71)は、市長に審査請求し、取り消しを求めた。市の審理員は19年、開催日が過ぎていて取り消しには法的利益がないとして却下したが、市が集会の日時やそれによって生じる弊害を考慮せず、政治性のみを理由として不許可にしたのは裁量権の逸脱と付言した。

 その後、市は、庁舎を使う際の決まりを定めた「庁舎管理規則」に「公務に支障をきたす行為」を追加。担当者は「デモ行進などは、集会の内容を市が支援していると捉えられ、反発や抗議活動により公務が滞る可能性がある」と説明する。

 似たロジックは、14年に金沢市庁舎前広場で計画された「軍事パレードの中止を求める集会」の不許可を巡る訴訟の判決でも見られた。判決は、市長の裁量権を認めたうえで、「集会が開かれれば市の中立性に疑念が生じ、将来の公務に支障が生じるおそれがある」と判断し、原告側の請求を棄却した。鎌倉市の担当者もこの訴訟を知っていたという。

 小堀さんは「当然使えると思っていた場所が使えず、驚いた」。過去に「安保法制反対・廃案」などを訴えるデモで前庭を集合場所として使った経緯も踏まえ、「政治的だからこそ、市民が語り合うことが必要。公共の空間である市庁舎前庭がその場所であるべきだ」と訴える。

 広場などでの政治的表現を禁じる規定を設けている他の自治体への取材では、集会不許可を理由に主催者と争いが生じたケースはなかった。

 各自治体は「政治性」をどう判断しているのか。

 長野市は、庁舎前にある約3千平方メートルの「桜スクエア」の利用取り決めに「政治活動、宗教活動、及びそれに類するものを禁止する」と盛り込む。同市庶務課の担当者は「中立性を保つため」と説明し、「何が政治活動かは具体的に決めておらず、個々の集会の目的や内容を見て判断する」。スクエアでは今年、市の職員組合による「反核平和の日リレー」が開催されたという。庁舎南側の広場での政治活動を規制する広島県福山市も具体的な基準はなく、申請を個別に判断するという。担当者は「公共の用地なので、中立性を保った使い方をしなければ当然指摘が来る」と話す。

 東海大の永山茂樹教授(憲法学)は、自治体の義務は表現の自由を守ることで、「行政の政治的中立性は、ヘイトスピーチなどを除く全ての政治的表現を認めることで保たれる」と指摘。内容に踏み込んで集会を規制する「中立」は間違いだと批判する。また長野市については、「反核平和の日リレー」の使用を許可していたとしても、「行政が活動の内容で仕分けていることに変わりなく、危険だ」と懸念を示した。(平川仁、堀越理菜)

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