神戸の福祉パス、シングルマザー対象外に 「生活が…」
無料で地下鉄や市営バスを利用できる神戸市の「福祉パス」。所得が一定以下の母子世帯も対象だったが、市は事業費の増大などを理由に10月から外す。代わりにひとり親世帯の高校通学定期券の全額補助を打ち出したが、シングルマザーからは「生活が立ちゆかなくなる」と戸惑いの声が上がる。
「子どもたちの送り迎えにも通勤にも福祉パスを使ってきた。大打撃です」。須磨区に住むシングルマザーの渡辺葵さん(36)はそう話す。
工事現場の監督として働きながら、高1と中2の娘2人を育てる。車はないので、大阪市内の職場までの通勤、週末に子どもと遊びに行くとき、買い物に行くときなど、福祉パスの存在はありがたかった。
6月ごろ、市からの手紙で福祉パスが使えなくなると知った。通勤で自宅から三宮駅まで出るのに使うバスと地下鉄がこれまで無料だった。会社が負担してくれることになったが、「これをきっかけに解雇されたらどうしよう」と、なかなか言い出せなかったという。
高校生の通学定期が無料になることで、中2の娘に「遠くの高校には行かないで」と言わずにすむのは助かる。でも「娘が高校生になるまでが一番しんどかった。福祉パスがあったからさせてあげられたことがたくさんあった」という。
小学生の息子2人を育てる30代のシングルマザーは、「福祉パス頼みで今のアパートに決めたのに」と戸惑う。
家賃は安いが、駅までバスに乗らないといけない。福祉パスがあることを踏まえて物件を決めた。「バスも地下鉄も高いし、福祉パスが使えないなら別の場所に住めばよかった。生活が何もかも変わってしまう」とため息をつく。
■識者「タイミングが悪すぎる…