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 マグニチュード7・0の地震が襲ったトルコ西部イズミル県。集合住宅などが倒壊したエーゲ海沿いの県都イズミルに31日未明、記者が入った。がれきが散乱する現場で必死の救出活動が続く。「早く見つけて」「無事でいて」。現場には悲痛な声をあげる家族や友人の姿があった。

 「ピピー! ピピー!」

 地震から12時間以上が過ぎた31日未明。9階建てほどの集合住宅が上から押しつぶされるように倒壊した現場に、指笛の音が響いた。崩れ落ちた天井と床にはマットレスが挟まり、洋服や毛布が散乱していた。

 「静かに!」。重機はエンジンを切り、照明などに使う発電機も止められた。一瞬の静寂のなか、救助隊員が生存者の声に耳を澄まし、居場所を確認する。家族や友人の救出を待ちわびる人たちが近寄り、がれきの隙間に目を凝らす。だが生存者は見つからず、捜索を再開。肩を落としてその場に座り込む人もいた。

 姉のアイシェさん(59)が6階に住んでいたというイスマイル・クルテルさん(55)は、「あそこの部屋です」と記者に指さした。

 跡形もない。その階下の部屋は少しだけ空間が残っている。天井ファンが風にあおられて回っていた。

 地震後にアイシェさんと連絡が取れなくなり、車で1時間半かけて現場に着いた。Tシャツ姿のまま家を出たため、親戚らにジャケットと毛布をもらって救出活動を見守った。

 地震がなければ、31日は1カ月ほど前に生まれた孫を連れて、料理が得意な姉の家を訪れる予定だった。「焼いたナスにひき肉を詰めた料理が本当においしかった。お願いだから、無事でいて欲しい。それだけです」。それ以上、言葉が続かなかった。

 現場では、数百人態勢で懸命の捜索活動が続く。救助隊員は「60代の女性をがれきから引き出したが、亡くなっていた。心が折れそうになるが、一人でも多く助けたい」と話した。

 救出された人が運び出されるたびに家族らしき人たちが押し寄せるが、顔が覆われていて身元が確認できない。「男なの? 女なの? 何歳くらいですか」「このままじゃ何もわからない」。そう叫んで救急隊に詰め寄るが、答えはない。救急車が現場を離れると、やり場のない怒りに震え、涙を流しながら互いに抱き合った。

 印刷会社で働くジョシュクン・オズベルキットさん(27)は、15歳の双子のいとこを捜す親友に付き添って現場に来た。「子どもたちは母親がひとりで育てていた。ここで待つ家族はずっと、声も出さずに涙を流しているだけ。何と声をかけていいのか分からない」とつらそうに話した。

 弁護士のアリジャン・テメルさん(58)は、親族の女性が倒壊した集合住宅に取り残されている。建物は8階建てほどで、築約30年だという。ただ、周囲の建物は壁にひびが入るなどした程度だ。

 テメルさんは建築段階での過失を疑う。「自分が住んでいる家は60年も経っている。なぜ、ここだけが崩れ落ちるのか。亡くなった人は、施工業者に殺されたようなものだ」と語気を強めた。トルコではこれまでに何度も大規模な地震があったが、対策の不十分さが指摘されてきた。テメルさんは「日本と同じで、トルコは地震大国。『神が守ってくれるはずだ』という意識を捨て、本気で防災に取り組むしかない」と訴えた。(イズミル=高野裕介)