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 予防接種でワクチンを受けると、次のワクチンを受けるまでに一定の期間をあけないといけないことがありますね。去年までは、この時期にインフルエンザワクチンを受けようとすると、「最近なにか予防接種を受けましたか?」と聞かれることがあったでしょう。

 これまでは生ワクチンだと27日間、不活化ワクチン(細菌の毒素をなくしたトキソイドを含む)だと6日間待たないと、別の種類のワクチンを受けることができませんでした。

 それがこの10月から、変更となりました。注射の生ワクチンは従来通り27日間の間隔をあけなければなりませんが、ほかのワクチンの場合は「接種間隔をあける」という記載が、厚生労働省の定期接種実施要領からなくなりました。2012年以降ずっと、医師たちは厚生労働省に求めていたんです。

 「もともとなぜ注射の間隔をあけることと決まっていたの?」「それを撤廃するのは危険なんじゃないの?」と思う人がいるかも知れません。実は、その決まりは日本独自のものでした。

 予防接種は、死亡リスクや、合併症・後遺症が残るリスクが実際に感染症になったときに比べるとはるかに低いものの、副反応の可能性がゼロではありません。それを予防接種法などの公権力によって積極的に勧奨するものなので、製造方法や接種方法は厳しい決まりがあります。安全で効果的とわかっている一定の方法で実施してほしいからです。

 でも、今まで日本で行われていたほど接種間隔を厳密にしなくてもいいということから、今回変更になりました。世界中の何十億人の人たちが、延べ何兆回にわたって接種間隔を1週間~4週間あけずに受けても問題ありませんでした。

 一方、日本で医療機関は予防接種のミスが生じると保健所に届け出をしますが、一番多い接種の誤りが間隔の間違いでした。定期接種実施要領から間隔の規定が減ることで、誤接種の届け出を出す例は少なくなるでしょう。

打ち方の選択肢増える

 ウイルスや細菌などの病原体は常に私達と密接に存在しており、機会さえあれば体内に侵入し、ときに感染します。普通の生活を送っていても体のいろいろなところに病原体は付着しているため、傷があったり免疫機能が弱まったりすると体内に入ってきます。肌に常在菌がいると聞いたことのある人は多いと思います。常在菌とともに悪い菌も存在しますから、傷口から入って化膿(かのう)したりとびひになったりします。

 また、少し寒くなってくると、とたんに風邪を引いた子が外来に増えます。鼻や口の粘膜からウイルスが入って来るからですね。他にも肌荒れから細菌が侵入したり、歯を磨けば歯肉から出血したり、誰かがくしゃみをした飛沫(ひまつ)が飛んできたりということは同時に起こりえますが、私達の免疫機能はそれぞれに対して対抗できます。

 同じようにワクチンを同時に数種類受けても、それぞれに対して抗体が作られ、病気に対する準備ができます。日本は従来、予防接種は一度に1本しか打っていませんでしたが、安全性に問題がなく効果も落ちないということがわかってから、同時に何種類も接種するようになりました。

 今、赤ちゃんが5種類のワクチンを同時に受けるのは普通のことです。B型肝炎、ヒブ、肺炎球菌、4種混合、ロタウイルスです。1歳になればMR、水痘、おたふく風邪、ヒブに肺炎球菌、さらに希望すれば日本脳炎、インフルエンザのワクチンも同時に受けられます。注射は2.5センチメートルの間隔をあけて打つので、本数が多い場合、腕と足に分けます。このように物理的な間隔をあけることができますが、別の日にして時間的な間隔をあけるという方法もあります。どちらがお子さん本人と保護者にとって負担が少ないか、ご家庭によって違うと思うので選択して下さい。

 なお、1回目のB型肝炎ワクチンと2回目のB型肝炎ワクチンのように、同じ種類のワクチンをどの間隔で受けるかという決まりには変更がありません。不活化ワクチン、トキソイドワクチン、生ワクチンはそれぞれ一番抗体の上がりやすい接種間隔に基づいてスケジュールを組みますから、従来どおり受けましょう。

森戸やすみ

森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はどうかん山こどもクリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。