第4回「目覚めたのです」トランプ嫌いがQアノンを信じるまで

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ペンシルベニア州ヨーク=大島隆

連載「2つのアメリカ 見えない境界のある街から」

かつてないほど分断が進むアメリカは、どこへ向かうのか。大統領選挙の激戦州ペンシルベニア州の街ヨークで、「二つのアメリカ」の境界線上にある場所を見つけた。この地に住みながら、アメリカ社会の今を伝えるルポの4回目。(敬称略)

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 それはまるで、秘めていた信仰を告白するかのようだった。

 「何があなたの気持ちを変えたのですか?」

 「トランプについて?」

 「そうです」

 「……実は、Qアノン(QAnon=キューアノン)のことを調べ始めたんです。それで、目覚めたのです」

 タビサ・バーロウと私は、ヨークから車で30分ほどの距離にある郊外のピザ店前で話していた。店ではこの日、レストランの客数制限や店内のマスク着用など、州政府が決めた新型コロナウイルス対策に反対する人たちの会合が開かれていた。

 ランカスターの印刷会社に勤めているというタビサも、こうした州政府の方針に反対している一人だった。両耳には、「自由な人間として歩く」という言葉をかたどったイヤリングが光る。男性が通りがかりに、「そのイヤリング、いいですね」と声をかけると、彼女は照れながら「ありがとう!」と返した。

 Qアノンの「Q」とは、2017年にネット上に現れた正体不明の投稿者のことだ。AnonはAnonymous(匿名)の略。Qと、その言葉を解釈して広げる人々を総称してQアノンと呼ぶ。その主張を一言でいえば、政財界やメディア、ハリウッドを牛耳って世界を影で操る勢力が存在し、トランプは人々のために彼らと戦っている、というものだ。この勢力は子供の性的人身売買のネットワークを張り巡らせているというのも、その主張の核だ。

「コロナが私を変えたのです」

 タビサは今、熱心なトランプ支持者として電話や戸別訪問をしている。ただ、元々はトランプ支持ではなかったという。

 「トランプのことは嫌いでした。私はずっと共和党を支持しているけど、前回トランプには投票しませんでした。けれど、コロナが私の見方を変えたのです。自分で調べて、わかったのです。トランプは言い方が粗削りなところがあって、そこはあまりいいと思っていない。けど、彼は人々のためにやっているのです。いまでは100%支持しています」

 トランプが嫌いだった? 彼女の話す内容に興味を持ち、支持に転向した理由を聞いてみた。そこで彼女の口から出てきたのが、Qアノンという言葉だった。

 「フェイクの主流メディアが…

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