「ことでん」レトロ電車2両の引退を記念した特別運行=福家司撮影
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 香川県内を走るローカル私鉄、高松琴平電鉄(ことでん)は、現役の電車としては日本最古だった「20形23号」などの引退を記念した特別運行を先月20、21日、琴平線で行った。23号は1925年製造で61年に近鉄から譲渡されて以来、長く親しまれた。引退後は、お遍路さんの休憩施設として活用される。

 特別運行は、ことでんの「レトロ電車」4両をつないだ列車で実施。抽選で選ばれたファンら約230人が乗車した。琴電琴平側の先頭には23号、高松築港側の先頭にはこちらも今回限りで引退することでんオリジナルの「5000形500号」(28年製造)が連結された。

 20日は午前と午後の2回、仏生山―琴電琴平間を往復。21日は午後に仏生山発着で一宮―高松築港間を2往復した後、仏生山工場で4両を並べた撮影会があった。新型コロナウイルスの感染対策で密集を防ぐため、ダイヤを公表せず実施されたが、沿線や駅では2両の引退と最後の4両運転を惜しむ多くのファンの姿が見られた。

 20日に親子で乗車した丸亀市綾歌町の会社員木村洋一郎さん(34)は「小学校のときに乗っていたので、懐かしい思い出がよみがえった。寂しいが、車歴も古いので仕方がないのかなと思う。保存されるというので、また会いに行きたい」と話していた。

 ことでん社員の思いも格別だ。親子2代にわたってレトロ電車の整備を手がけてきた山下耕三車両所長は、23号の引退を「老朽化して部品の調達が難しくなり、多額の費用がかかる8年に1度の全般検査も再来年に迫っていた」と説明する。

 23号は、高松市のNPO法人「88」が譲渡を受け、運営する同市牟礼町のお遍路さんの休憩所・ドッグランの敷地内で休憩施設として活用される。88の関係者は「施設はかつて走っていた志度線の沿線にある。運転台も公開して子どもたちに楽しんでもらいたい」と話す。500号も別の譲渡先が決まっているという。

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 95年間、おつかれさま――。21日夜にあった23号などレトロ電車の特別運行の最終便に記者も参加した。4倍近い競争率をくぐり抜け、幸運にも乗車券を手にすることができた。

 車内は「3密」を防ぐため、座席がスペースを空けて指定され、折り返しの一宮駅以外は、ホームへの降車は許されなかった。

 4両はいずれも非冷房。窓から入る秋の風に吹かれながら、40年ほど前に夏場は蒸し風呂のような満員電車で瓦町―太田間を通学した頃を思い出した。

 今やこの4両を除いて、ことでんの冷房化率は100%という。激しい揺れと独特のモーター音で走る電車もこの4両のみとなり、時の流れを感じた。

 「太田駅まで駅のご案内は行いません。列車の走行音をお楽しみください」。最後の2往復目が高松築港を発車前、車掌が粋なアナウンス。夕方、仏生山工場の留置線に4両を並べ、かつて走っていた急行「りつりん」などいろいろなヘッドマークを付けての撮影が繰り返された。

 撮影会を終えて車庫に引き揚げる23号と500号に、ファンから長年の走行をねぎらう拍手が送られた。(福家司)