拡大する写真・図版スマホを操作する30代の女性

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 コロナ禍が続く中、若い女性の自殺者が増えている。30代以下の女性の8月の自殺者数は193人と前年8月に比べ74%も増え、とくに10代では去年の3・6倍にも上る。何が起きているのか。

「今回は早い」

 厚生労働省によると、今年8月の自殺者は1854人と、昨年8月に比べて251人増えた。男性は5%増だったのに対し、女性は40%増だった。とくに若い女性が増えており、20歳未満が40人(前年11人)、20代が79人(同56人)、30代が74人(同44人)だった。

 自殺の問題に詳しい国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部の松本俊彦さんは「パンデミックや自然災害がメンタルに影響するまでには通常、タイムラグがある。しかし今回はその影響が出るペースが早い」と話す。

 なかでも「特に問題」とあげるのが、若い女性の自殺だ。

 松本さんの外来診療では、5月の大型連休ごろから10代や20代前半といった若年層や、リストカットをする女性の患者が増えた。「自殺未遂や自傷行為がこの数カ月で多くなった」

 多くが人間関係の悩みを訴えるが、その対象が男性と女性では違うという。「男性は職場など家の外での人間関係で傷つくことが多いが、女性は家族やパートナー、友達といった身近な人たちとの関係で追い詰められる」と話す。

 緊急事態宣言の影響や「新しい生活様式」により家で過ごす時間が増え、家族関係の問題が生じやすい一方で、外で友人とランチに行ったりお茶をしたりという機会が減った。そのためストレスや悩みをうまく発散する場も失われている、と松本さんは分析する。

 人間関係の悩みの相談相手は、実は家族ではないという。関係が近過ぎるため、「がっかりさせたくない」という気持ちや罪悪感が生まれ、打ち明けづらいためだ。「大切な人だからこそ、話せないこともある。いま必要なのは、『不要不急』といわれたものや、家族以外との3密なコミュニケーションなのかもしれない」

年末にも注意

 警察庁と厚生労働省の統計によると、自殺者はここ10年連続で減っている。昨年は2万169人と、1978年に統計を取り始めてからもっとも少なかった。

 今年1~6月の自殺者数は昨年とほぼ同じレベルかやや少なめだったが、7月以降、増えている。松本さんは「コロナが関連する自殺は、時期によって変化するかもしれない。飲食店の経営や自営業をしている人は年末に増えるおそれがある」と指摘する。

拡大する写真・図版国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部の松本俊彦さん(国立精神・神経医療研究センター提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大により、女性や若者に精神的な影響が起こりやすいことは、早くから指摘されてきた。

 今年3月に公開された国連の政策提言によると、新型コロナが感染拡大中のインドでの調査では「ストレスを受けている」と回答した女性は66%と、男性の34%と比較して多かったという。

 特に、妊娠中の女性や出産したばかりの女性は、新型コロナの影響で社会的支援につながりにくい上、感染への恐れも加わり不安になりやすいという。これ以外にも、一斉休校などで子どもが家にいたり、自宅で高齢者の介護が必要になったりと、女性の負担が増大してストレスが強くなると指摘する。

 約5万3千人がオンラインで回答した中国の研究では、回答者の35%が心理的苦痛を経験し、女性の方が男性より影響を受けていた。また18~30歳の若い年代と60歳以上の世代で、心理的苦痛の度合いが高かった。若い世代では、ソーシャルメディアから大量の情報を入手していることが、ストレスを引き起こしやすいのではないかと研究者は指摘している。(戸田政考、月舘彩子)

悩みを抱えた時の相談先は以下の通り。

・自殺予防いのちの電話

フリーダイヤル0120・783・556(毎日午後4時~午後9時、毎月10日は午前8時~翌午前8時)

ナビダイヤル0570・783・556(午前10時~午後10時)

・東京いのちの電話

03・3264・4343(日・月・火は午前8時~午後10時、水・木・金・土は午前8時~翌午前8時)

・よりそいホットライン

フリーダイヤル0120・279・338(24時間、IP電話などからは050・3655・0279)

・生きづらびっと

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