徳島・牟岐町の実生ユズ商品 フランスに輸出し産地再生

斉藤智子
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 接ぎ木でなく種から育てた実生(みしょう)ユズの商品を、地域ブランドとしてフランスに輸出し、産地の再生を目指す取り組みが徳島県牟岐町で進んでいる。県と町、JAかいふが連携し、今夏からは瓶詰めされた果汁が船便で送られている。

 実生ユズは香りが強く、えぐみが少ないのが特徴という。ただ、種まきから収穫までに18年ほどがかかるとされ、木の高さが最大10メートル以上まで成長して収穫しにくいこともあり、生産者の間では接ぎ木のユズ栽培が主流となっている。

 港町である牟岐町では、家々の庭などで育てた実生ユズを魚料理などに使う食文化が根づいていた。県南部総合県民局によると、家ごとに数本~数十本、町内約70戸で約700本の実生ユズの木がある。

 しかし、生産者らの高齢化や食生活の変化などで、最近は十分活用されていなかったという。

 こうした中、「実生ユズがほしい」という申し出をフランスから受けた県は、貴重な果樹をいかそうと昨年度から、町やJAと連携した取り組みを始めた。

 高齢などで実を収穫するのが困難な生産者のため、地域の40~50代の農業の担い手でつくる「牟岐の農業を守る会」のメンバーが依頼を受けて作業する仕組みをつくった。

 栽培講習会を開き、生産者との技術の共有、普及にも取り組んでいる。枝を引いて低く広げて鶏ふんを施肥し、収穫しやすいよう果樹の形を整えたり、古い木を回復させたりしている。

 輸出用の条件は無農薬で育て、収穫時には実を傷つけないよう一つひとつはさみでとること。手間はかかるが、昨年度は26戸の約260本から3109キロの実がJAに出荷され、約70万円の売り上げがあった。

 このうち2990キロは上勝町の「阪東食品」で果汁を搾り、フランス向けに「MISHO YUZU」と銘打って瓶詰めした。新型コロナウイルスの影響で当初の予定より半年ほど遅れたが、これまでに8月に第1便、9月末には第2便と計約70リットルを輸出した。当地のレストランで、料理やデザートの風味付けなどに使われるという。

 木のトゲで傷つくなどした実は輸送中に傷むおそれがあるため、JAかいふ牟岐女性部で搾り、国内向けに商品化した。フリーズドライした皮についても商品開発中だ。

 女性部長の溜口幸子さん(65)は「実生ユズは深みがあって、すし、刺し身や焼き魚、野菜など何にでもかけられる。多くの方に知っていただけたら」と話した。夫の好雄さん(71)も「今の若者はユズ酢をあまり料理に使わないけれど、販路拡大できたらありがたい。輸出が弾みになったら」と期待している。

 今年度の収穫は10月末~11月中旬ごろで、昨年度並みの出荷が見込まれている。今後は海部郡全域から実を集め、年1500万円の売り上げを目指す。(斉藤智子)