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 衰弱死か窒息死か――。札幌市の池田詩梨(ことり)ちゃん(当時2)が死亡した事件で、母親の莉菜被告(22)の交際相手で、傷害致死と保護責任者遺棄致死の罪に問われた藤原一弥被告(25)の裁判員裁判が2日、札幌地裁であった。遺体を解剖した医師と、弁護側が申請した別の医師が出廷し、死因をめぐり主張が対立した。(榧場勇太、川村さくら)

 法医学が専門の男性医師は解剖結果をもとに「死因は低栄養による衰弱死で、(死亡前の)2~3週間、体重を維持する食事を与えられていなかったと判断できる」と見解を述べた。

 遺体は身長74センチ、体重6740グラムで、「身長に対して著しくやせ過ぎ」と評価。皮膚のしわの状態から短期間のうちにやせた可能性を指摘した。大腸の内容物には綿状のごみや毛が含まれ、「飢えた状態でごみを食べた可能性もある」と説明した。胃には「カプサイシン」というトウガラシの辛み成分が残っていた。

 通常は数センチある腹部の皮下脂肪は3~5ミリしかなく「骨と皮の状態だ」とした。心肺停止の状態で救急搬送されたときの体温は30・1度しかなかった。「体温をつくるエネルギーが枯渇していた」と評価した。

 子どもの免疫機能に関わる臓器「胸腺(きょうせん)」は通常なら数十グラムあるが、詩梨ちゃんには2・7グラムしかなく、医師は「数カ月以上、強いストレスによって萎縮した可能性がある」と指摘した。

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 医師は遺体に多数あった外傷の状態も説明した。顔や胸のやけどの痕は皮膚がめくれて入院が必要なほどで「高温の液体などをかけられた可能性がある」と指摘。頭部には全体に皮下出血があり、「(死亡前の)数時間から2週間程度にわたり、継続的にたたかれたり、圧迫されたりした可能性がある」と説明した。

 この医師が調べたところでは、莉菜被告の爪は1センチほど伸びきれいに整えられていた。握り拳がつくれないことから、暴行を加えたのが莉菜被告の可能性は低いとした。

 詩梨ちゃんが死亡したのは昨年6月5日。検察側は初公判で、藤原被告が5月31日に「2歳児が転倒し頭がぶよぶよになっている」と自ら病院に電話した、と明らかにした。適切な処置をした場合の生存の可能性について検察官から問われ、医師は「死亡5日前なら生命を維持できた可能性は高い」と述べた。

 ただ、詩梨ちゃんの外傷については脳機能や心臓機能を低下させて死期を早めたものの、死亡するほどひどい状態ではなく、直接の死因ではないと指摘した。

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 弁護側の証人として出廷した別の男性医師は詩梨ちゃんの死因について、「極度の衰弱状態とは言えず、死因は、嘔吐(おうと)したものが気管支に詰まったことによる窒息死の可能性がある」とする見解を示した。

 詩梨ちゃんの血液検査の結果について「たんぱく質などの数値が低下しているが、死に至るほど極度ではない」、3~5ミリの皮下脂肪は「まだエネルギーに回せる分は残っていた」と評価。胃の内容物の一部には、かんだ跡もあるとし、その数時間後に衰弱死するとは考えにくいとした。詩梨ちゃんへの救命措置で気管挿管をした医師のカルテや、胸のCT画像をもとに、気管支に嘔吐したものが詰まった可能性があるとの見方を示した。

 検察側は尋問で、弁護側の証人の医師が内科などが専門で、司法解剖の経験がないことを指摘し、見解の根拠をただした。

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