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経世彩民 和気真也の目

 新型コロナウイルスが欧州で猛威を振るう直前の2月、スウェーデン南部の都市、カルマルにある高校を訪れた。空き教室の一角で、熱心に教員と話をしている2人の生徒がいた。イーサク・メルベックさん(19)とアルビド・イーデンさん(19)で、高校発で会社を立ち上げた起業家だ。

 立ち上げたのは、高校などに出向き、セクシュアルハラスメントについて講義する事業だ。シナリオを用意し、学生らに考えさせながら対処法を学ぶ。例えば、裸の写真を恋人に送る行為は、どこがどうして問題なのか。学校の廊下でセクハラを目撃したらどう対応するか――といった具合だ。

 当初、服のリサイクル販売の起業も考えたという。だが、「競合が多いし、もっと社会課題に貢献したい」。目にとまったのが性的虐待を報じた新聞記事だった。身の回りでもセクハラの悩みはよく見聞きする。麻薬やいじめについては学校でも学ぶが、セクハラはない。調べると、その手の講義の価格はけっこう高かった。「安価に提供できたらニーズがあるのでは」。同年代の目線でともに考える講義は評判を呼び、地元メディアにも取り上げられた。

 スウェーデンでは、初等・中等教育のなかで起業家の「種」を育む試みが広まっている。2人に起業を促したのは、高校生が実際に起業する「若者の起業家精神」という非営利団体(NPO)によるプログラムだ。高校生が原則1年、ビジネスモデルづくりから営業、製造、販売、決算などを実際に経験する。イーサクさんとアルビドさんの高校では、授業の一環として認め、後押しする。

拡大する写真・図版高校で起業したイーサク・メルベックさん(中央)とアルビド・イーデンさん(右)。パトリック・ゴーム教諭(左)の指導を受ける=スウェーデン南部カルマル、2020年2月11日、和気真也撮影

 2人を指導するパトリック・ゴーム教諭は「実社会のなかで、ビジネスの難しさを知る経験を若いうちに積むことは、いずれ大きな経営に挑戦するために大事だ」と話す。「カルマルには、若者の起業を町ぐるみで応援する雰囲気もある」と言う。会社員や専門家がボランティアで学生らの相談にのる制度が充実しており、イーサクさんたちも講義メニューづくりで専門家の助言を得ることができたという。

■起業する生徒は年…

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