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 気候変動に対して、国内外で若い世代の意識が高まっている。「フライデーズ・フォー・フューチャー(FFF、未来のための金曜日)」と呼ばれる抗議活動が全世界で行われている。若者は、気候危機にどう立ち向かおうとしているのか。上の世代に何を伝えたいのか。モデルで、環境活動家という顔も持つ小野りりあんさん(31)に聞いた。

朝日地球会議にも登壇
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 ――環境活動家になったきっかけは何ですか。

 スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんのことを知ったのがきっかけです。それまで気候変動は環境問題の一つと思っていましたが、最優先だと感じました。8歳の時にセバン・スズキさんのスピーチを聞いて以来、環境問題に関心を持っていたのですが、一人じゃ何もできないと思い、気持ちを「保存」していました。

 20代半ばだった2015年にデンマークに短期留学して、世界中から集まった同世代の人たちと環境問題の授業で議論して、日本でも同世代で話せる仲間が必要だと思いました。帰国後、国際環境NGO「350.org」にボランティア登録して活動しました。

 19年2月に、日本でも学生たちがグレタさんが始めたFFFのキャンペーンを開始すると聞き、サポートすることにしました。最初は大人のサポートが必要でしたが、いまは中高生や大学生が中心となって活動できるようになっています。私は学生ではないですが、いまも活動に深くかかわっています。

 ――現在の活動目的の中心は何ですか。

 経済的利益より人を優先した社会をつくりたいと思っています。単に権力者が変わったり、二酸化炭素を減らしたりするだけでは、現在、私たちが直面している問題は解決しません。根本的に社会システムを変え、市民の声が反映される社会につくり変える必要があります。そのために「気候正義」という言葉を広めたいと思っています。

 ――「気候正義」についてどう思っていますか。

 世界には、気候変動の原因をつくっている人とつくっていない人がいて、気候変動のより大きな被害を受けるのはつくっていない人たちです。「気候正義」の考え方に基づいて、不平等をなくし、すべての人が犠牲にならない解決策を探る必要があります。

 ――昨年12月にスペイン・マドリードで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)に参加していましたね。

 当初はチリで開催される予定でした。CO2排出が多い航空機での移動を少なくしようと思ってヨーロッパ回りで行く計画を立てました。ブラジル・アマゾンの熱帯雨林の火災など気候危機が差し迫っているのを感じ、のんきにモデルをやっている場合じゃないな、世界で本気に動いている人たちと出会って生の話を聞きたい、と思ったのです。

 昨年10月末から11月初めにシベリア鉄道でユーラシア大陸を横断していたら、開催地が急にマドリードに変更になったと聞き驚きました。

 ――旅先ではどんな人と出会いましたか。

 ロシアではデモは禁止されているのですが、FFFの若い男の子は毎週、一人で街角に立って気候危機を訴えていました。警察官や兵士に職務質問される中でも続けていました。私自身は国外追放の恐れがあるため、見ていることしかできませんでしたが、発言の自由がない中でも戦い続ける情熱に胸が熱くなりました。

 ドイツのベルリンでは、デモに27万人も動員したFFFのメンバーに会いました。日本に比べて気候危機への意識が高く、周囲の理解もあるのだろうと思っていましたが、クラスメートには理解してくれる友だちがおらず、FFFのメンバーが心の支えだと言っていたのでびっくりしました。

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 ――COP25が開催されたマドリードはどうでしたか。

 スペインのFFFのメンバーに、どうやって多くの人を動員できるのかを聞きました。人種やジェンダー、障害者、労働などいろいろなテーマで活動している市民団体に、すべての問題がつながっていることを知ってもらい、賛同者を増やしてネットワーク化しているという答えでした。どうやったらみんな一緒に動けるか、日本でも実現したいと思いました。

 ――帰国して何か始めましたか。

 社会を変えていきたい人たちの横のつながりをつくるために、今年5月に「アクティビストハウス」をつくりました。現在は私やFFFのメンバー、若者の政治参加を進めるグループのメンバーなど5人で一緒に生活しています。ウェブサイト(https://www.activistshouse.com/別ウインドウで開きます)もあります。8月にはオンラインコミュニティー「Green TEA(Team Environmental Activists)」も立ち上げました。

 「人口の3.5%が参加する社会運動は成功する」というデータがあります。日本で市民運動を強くして、若者や女性の声が反映される社会にするために、「3.5%」になることを目指すグループが必要だと思っています。

 ――上の世代に尋ねたいことは何ですか。

 若者の現状や未来を本気で考えているのか。そのために動く気はあるのかを、聞きたいです。いままでのシステムのあり方では、世界は持続できないと思います。少しずつ社会や経済を変えていく形で、気候危機を乗り越えていけるのか。時間的に間に合うのか。根本的から社会システムを変えない限り無理だと思います。私は、そのための原動力となる市民の可能性を信じています。(聞き手・編集委員・石井徹

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