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 武田信玄の「隠し湯」と言われる湯村温泉郷(甲府市)の老舗「常磐ホテル」社長をつとめる笹本健次さん(71)が、ほぼ半世紀前の鉄道写真を収めた写真集を2冊、世に出した。コロナ禍でホテルの休業を余儀なくされ、自身も「巣ごもり」生活を強いられたことを逆に生かし、保管していたネガフィルムを整理したという。

 1冊は「昭和40年頃の山梨の鉄道追想」。1961(昭和36)年から12年間にわたって撮影した山梨県内の鉄道写真を集めた。9月初旬の出版以降、甲府市の朗月堂書店では週間ベストセラーの上位に入った。

 子どもの頃、生家の旅館の屋根の上にあった物干し台からは、中央線を煙をはいて走る蒸気機関車D51がよく見えたという。甲府駅のそばには蒸気機関車の車庫もあった。

 小学6年の時に初めてカメラを手にし、夢中になって鉄道を撮った。時代は、高度経済成長期からオイルショックにかけての頃。新宿から山梨県内を抜けて長野県の松本方面に向かう中央線は、電化区間が延伸されて急速に変化していた。

 写真集にはSLの雄姿をはじめ、登山客らを運んだディーゼル急行「アルプス」、66年に登場した特急「あずさ」などを収めた。

 「ボロ電」の愛称で親しまれ、62年に廃止された山梨交通鉄道線や、富士急行の懐かしい電車、八ケ岳を背に疾走する小海線のSLなどもある。大学時代に出入りしていた鉄道ジャーナル社の「日本の駅」に掲載した、72年当時の山梨県内の国鉄の全駅も掲載した。

 もう1冊は「6×6で撮影した都電の面影」。大学時代に東京に下宿し、生活の足として使っていた都電を撮影したもの。「6×6」は中判カメラのフィルムの仕様のひとつで、正方形の写真が撮れるのが特徴だ。

 写真集には、新宿かいわいを並んで走る車両や、渋谷駅のデパート前に停車している都電など、こちらも今では見られない写真を多数収めている。鉄道車両だけでなく、洗濯物がはためく住宅密集地や、人と自転車と車が交錯する大通りなど、変わりゆく東京の街並みを楽しむことができる。

 新型コロナの影響で、経営するホテルはゴールデンウィークに休業を余儀なくされた。「焦っても仕方がないので、自宅にこもっていた時間を生かしてネガを整理した」と話す。「50年前と今ではまるっきり違う景色になっている。古いネガを見ていて改めてそのことを感じました」

 本業の方では、県旅館ホテル生活衛生同業組合の理事長として業界ぐるみのコロナ対策に奔走中だ。

 写真集はいずれもACJマガジンズ刊。「山梨の鉄道追想」は本体価格2700円、「都電の面影」は同4500円。(吉沢龍彦)