ドローンで除草剤散布に賛否 「地獄」解消か環境破壊か

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福井万穂
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 佐賀県は、人材不足が深刻化する林業の省力化を図ろうと、ドローン除草剤を散布する試みを進めている。夏場の過酷な草刈り作業の負担を軽くし、担い手の確保につなげたいためだ。しかし実証実験を知った人たちから「自然環境が壊される」と声が上がり、事業反対の署名も集まっている。

 9月初旬、太良町の多良岳山系にあるスギ林で、森林組合の職員たちが草刈りをしていた。ただ、職員の本田圭汰さん(23)は「1年で一番きつい、地獄の作業。林業を始める若者にとっては鬼門です」と明かす。

 作業は毎年夏場。植えたスギ・ヒノキの苗木が成長するまでの約5年間、青々と伸びた下草で日陰にならないよう、刈り取る。同町の組合では、約2カ月かけて50ヘクタールほどを回る。

 草刈り機を背負い、虫に刺されるのを防ぐため長袖と長ズボンを着る。2メートルほどになった苗木が並んだ傾斜地は足場が悪く、日差しを遮る大きな木々もない。

 空調機能付きの服を着るなど熱中症対策は取るが、今夏は途中で気分が悪くなる人が出たり、安全のために午前中で作業を切り上げたりしたという。本田さんは「作業を軽くする方法があるなら使いたい」と話す。

県有林に色つけた水まき実験

 林野庁の2017年3月末時点の統計では、県の面積のうち森林は45%。このうち人工林が67%を占め、その割合は全国一高い。

 県によると、林業の現場で働く県内の技術者は18年度で294人。10年前の08年度は392人で、100人近く減った。危険を伴う力仕事で、給与水準も高くないことから、定着が課題という。

 そこで県は昨年度から、ドローンを使って山林に農薬を散布する実証実験を始めた。国が認可する除草剤などを薄め、下草の成長を抑える薬剤を作る。苗木が下草を超える高さになるまでの約5年間まくことで、作業の省力化を期待する。

 ドローンは、田畑での農薬散布で活用が進んでいる。一方、山地は傾斜があり、見通しも悪い。ドローンが安全に飛べるか、農薬が周辺に飛散しないかといった技術的な課題がある。

 実験では、ドローンで県有林に色を付けた水をまき、飛行の安全性や、散布の広がり方を見る。ほかに手動の噴霧器を使い、農薬を散布。下草だけに効果が出るか、土壌に残らないかなどを調べている。

地域おこし隊員「絶対やらないでほしい」

 ただ、18年度に同様の実験をした宮崎県では、環境への影響を不安視する県民から中止を求める声が上がった。県に電話やメールが相次いだほか、林業関係者が始めたネット上の署名に5千人以上が賛同。県は技術やコスト面の課題とともに、「県民から賛否両論がある」として、19年度以降は散布を取りやめている。

 佐賀市三瀬村の門脇恵さん(…

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