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 「いつか、オフィスの家賃を自分で支払えると良いですね」

 ときどき、お客さんにそんなことを言われる。もちろん、オフィスの家賃は自分(私が経営する会社)で支払っているのだが、私のことをよく知らない方は「寝たきりの男性が会社経営なんてうそじゃないのか。本当は親が代わりにやってるんじゃないのか」と思っているケースがある。

 自分のような寝たきりの状態でもテクノロジーをうまく使えば働ける、会社経営だってできるのだ、ということを証明したく、私は日々の活動を積極的にSNSで発信してきた。会社のPRや人脈づくりにもつながり、少しずつファンや取引先が増えていった。

 その意味では、SNSのおかげで今の私があると言っても過言ではない。一方、文字や写真でどれだけ発信したところで、やはり一定数の人は私が会社の経営をしていることに疑いを持っていた。

コロナで人と会えない

 しかも今年に入るとコロナ禍という誰も予期していなかったことが起きた。いつもであれば、私は年間に何十本と講演やイベントに声をかけてもらっていたがそれも皆無になった。実際に人と会うことが制限された私は、今まで以上に自分の活動を伝えることが難しいなと感じていた。

 そこで力を入れたのがユーチューブだ。

 いまでは老若男女の壁を越えて視聴される動画サービスだが、はじめはなぜみんながユーチューブで動画を配信するのか私はよく分からなかった。

 広告収益が目的だとしても、それなりの収益を得られるのはほんの一握り。多くの人は、企画や撮影、編集に費やした時間や労力はかえってこない。ましては毎日のようにライブ配信をしている人をみると、「なぜそこまでして」と不思議だった。

 私がユーチューブを始めたのは昨秋で、当初は視聴者もあまりいなかったが、それでも続けていたら「ある変化」が起こり始めた。

メッセージに変化が

 これまでは「障害があっても頑張っててすごいです」というメッセージが多かったが、ユーチューブを始めてからは「佐藤さんを支えるテクノロジーに興味が湧いた」とか、ある障害者の方は、私が視線入力でピアノをひく動画を見て「私も挑戦してみます」と、後日その動画を見せてくれた。

 SNSの文字や写真だけでは伝えられないものでも、動画であれば届けられるのだと確信した。今まで以上に、寝たきり社長を身近に感じてもらえるようになった。

 とはいえ、最近は炎上を狙うことで短期的な収益を上げようとする人もいる。先日も新型コロナになったユーチューバーがウイルスを拡散するという迷惑行為が話題になった。

 もう一つ、私は危惧していることがある。

障害者のユーチューブに違和感

 障害者がユーチューブで自分のパーソナルな部分だけでなく、多くの障害者に通じるデリケートな悩みをさらしていることだ。

 もちろん、障害に対する理解を深め、障害者本人にも知ってほしいことを伝えるのはとても大切だ。だが、障害者が男女問わず、ユーチューブで自身の裸体を出したり、排泄(はいせつ)や性の事情について発信をしたりする姿を見ると、私は言葉では表現できないもどかしさを感じてしまう。

 情報を発信することで、本人や社会全体にメリットがあるならいい。でも残念ながら現状は、大半の障害者はユーチューブのチャンネル登録数を短期的に増やしたいのではという気がする。

ゆがんだ需要と供給

 また視聴者は、障害者への理解を深めるのではなく、障害者に対し、面白半分で見ている気がしてならない。その需要と供給のマッチングは真の共生から離れていくのではないだろうか。

 少し前、私はある学校に出向いた後、こんなコメントをユーチューブにもらった。最後にそれを紹介したい。

 「ひさむさん! 先日は私の学校に公演にわざわざ来てくださってありがとうございます! 私も障害者で、死のうと思っていたんですが、ひさむさんの姿を見て生きる勇気が湧いてきました」

佐藤仙務

佐藤仙務(さとう・ひさむ)

1991年愛知県生まれ。ウェブ制作会社「仙拓」社長。生まれつき難病の脊髄性筋萎縮症で体の自由が利かない。特別支援学校高等部を卒業した後、19歳で仙拓を設立。講演や執筆などにも注力。著書に「寝たきりだけど社長やってます ―十九歳で社長になった重度障がい者の物語―」(彩図社)など。ユーチューブチャンネル「ひさむちゃん寝る」では動画配信も手がける。