上越市立城北中学校の生徒たちによる演劇集団「スタートライン」の25年目の公演が、11日から始まる。コロナ禍の影響で継続が危ぶまれたが、生徒や地域の人たちの熱意で伝統のバトンがつながった。公演では、現在と戦時中と対比させ、前を向くことの大切さを訴える。

 公演開始を1週間ほど後に控えた3日、城北中の体育館。フェースシールド姿の30人ほどの生徒が稽古に励んでいた。

 生徒の前に陣取るのは、市内で建築板金業を営みながら演劇に携わるマル丸山さん(50)=本名・石田幸雄さん=だ。マルさんの指導で生徒はセリフ回しやダンスを練習。稽古の終了予定時間を20分ほどオーバーする熱の入りようだった。

 スタートラインは、1996年にマルさんが立ち上げた。その前年、市内の別の中学校の生徒が自ら命を絶ったことに衝撃を受けたのがきっかけだった。

 城北中OBのマルさんは18歳で上京し、複数の有名劇団で俳優として活動。23歳で帰郷して塾講師をしていたが、その時の教え子で城北中の後輩でもある7人をスタートラインのメンバーにした。「友人を大切にし、夢を持つことの大切さを訴えたいと考えました」

 それから20年余り、800人以上の生徒がステージに立った。スタートラインをきっかけにプロの俳優になった卒業生もいる。公演には卒業生や教職員も参加し、マルさんも出演するだけでなく脚本や振り付け、演出も担ってきた。

 だが25年の節目になる今年、コロナ禍が襲う。中止も検討されたが、スタートラインの活動を見守ってきた地域の人たちの後押しで継続が決まった。生徒たちの熱意も高く、出演や裏方を希望したのは例年より十数人多い計37人に上った。

 築井咲希さん(3年)は手を挙げて座長になった。昨年は観覧する側だったが、出演者の熱演に魅了された。「涙が出るくらい感動しました。私もお客さんに感動を届けたい」

 今年はほとんどの部活動の大会が中止に追い込まれた。今回の脚本でマルさんは、そんな状況を盛り込んだ。

 演目は「TAKARAZUKAセレナーデ~夢とコロナと友情と」。コロナ禍のために大会の中止という憂き目にあった「城北ミュージカルクラブ」が戦時中の大阪にタイムスリップ。戦禍のために舞台に立てないタカラジェンヌの卵たちと出会う。両者の交流を描きながら、夢や希望を持つことの大切さを説く。

 マルさんは「コロナからは逃げられない。でも戦争中はもっと大変だった。それでも希望を捨てなかった人がいたように、前を向いて生きて行こうという思いを込めました」と話す。

 公演は城北中の体育館で13日までの4回。在校生や地域の小学生を招待する回もあるが、11日午後2時からと13日午後6時からの公演は一般公開される。マスクの着用が必要で、入館時には検温と、住所や氏名などの記入を求められる。入場無料。問い合わせは城北中(025・523・7266)へ。(鈴木剛志)

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