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 昨年10月の台風19号で大きな被害が出た宮城県丸森町は、避難所運営や復興計画策定など、被災経験を伝える活動を始めた。公式サイトには災害に対応する部署の一覧を載せ、豪雨被害を受けた自治体などにも働きかけて、ノウハウの活用を勧める。

 サイトでは「被災された自治体の職員の皆様へ」と題し、台風19号の被災時に多くの支援が励みになったとし、「被災地として経験した復旧・復興に向けた職務上のノウハウなど、各種情報を提供したい」と掲げた。

 こうした取り組みは、九州豪雨を受けて7月下旬から始めた。被災した熊本や大分などの計15市町村にメールを送り、支援を申し出た。これまでに土砂の撤去や家屋解体支援、復興計画の策定、農家支援などについて、8自治体から10件の問い合わせがあったという。

 このうち、最上川の氾濫(はんらん)で被害があった山形県河北町は、災害ごみの処理について丸森町に相談。河北町の担当者は取材に「経験に基づく情報が参考になり、迅速に動けた」と言う。

 ノウハウがあると挙げているのは、避難所の設置・運営▽災害弔慰金の支給▽義援金の配分▽災害ごみなどの計33業務。それぞれ担当部署名と連絡先を示し、各部署が被災自治体などからの問い合わせに応じているという。

 例えば避難所の設置・運営については、発災から約1カ月後に作成した実際の避難所運営マニュアルの提供を想定。「毎日午前9時までに避難者数を入力する」「保健師は日中に避難所を巡回し、さらに19時~20時にも巡回」といった項目が並ぶ。

 避難所ごとの手引はさらに具体的だ。舘矢間小学校避難所だと「6時起床」「6時25分ラジオ体操。5分くらいまえにテレビをつけておくこと」。小斎まちづくりセンター避難所では「特に夜の温度に注意、18度程度でよいと思う。あまり上げると乾燥し、風邪などを引きやすい」という具合だ。避難所の規模や環境に応じて柔軟な運営が必要だという。

 失敗談も合わせて伝えるようにしている。

 町は発災4日後の16日から、ボランティアの受け入れ拠点を町民体育館とする手はずを整えた。だが、体育館には支援物資が置かれ、スペースが不足しかねないことが判明。受け入れ先をスーパーマーケット跡地に変更せざるを得ず、受け入れ開始も20日に延ばした。

 結局、今年4月末までにのべ1万6750人のボランティアが訪れ、昨年11月3日には最大の906人が町内で活動した。保健福祉課の担当者は「多くのボランティアに来てもらうためにも、最初から広い場所を確保すべきだった」と話している。

 被災した住宅の解体・撤去費用を町が支援する制度についても伝える。半壊以上に判定された住宅や倉庫が対象で、解体業者の手配も自治体が担当する。プレハブ仮設の建設についても、ニーズを把握するための希望調査が重要だと伝える。避難所を回り、すべての世帯から聞き取ったという。

 こうした取り組みは、各地で広がりつつある。2017年の九州北部豪雨で被災した福岡県朝倉市が、同様の取り組みを展開。丸森町は復興計画策定などで参考になったとし、同調したという。町復興推進室の担当者は「災害協定を結んでいない自治体とも柔軟に連携できる。新型コロナの影響で実際に出向いて支援しづらいため、できることを探したい」と話す。(井上充昌)

丸森町が経験した災害対応の例

【災害ごみ】

 台風19号の影響で2万2千トンを上回る災害ごみが出て、仙台市や横浜市、民間施設でも受け入れ。既存焼却場に加え、すでに廃止した旧角田衛生センターの再稼働も検討したが、費用と時間がかかるため断念

【土砂の撤去】

 宅地に流れ込んだ土砂の多くはボランティアたちがかき出し。公費負担で業者が撤去する制度もあるが、時間がかかる。町には住民から200~300件の申請があり、撤去が始まったのは半年後

【復旧・復興計画の策定】

 外部有識者を招いて委員会を立ち上げ。基本方針は各地区で住民説明会を開き、中間案も説明会で示した。パブリックコメントとアンケートも実施

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