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 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性に頼まれて殺害したとして、医師2人が8月に起訴されました。この事件を受けて、記者は同じ症状の患者のヘルパーに取材し、患者の日常を知ることができました。一方で、「(私の患者は)明るく楽しい人。記者さんも会えば分かりますよ」と言われ、面食らいました。真意を確かめようと、本人と家族を訪ねました。

 「シュー、シュー」。人工呼吸器の音が居間に響いていた。8月中旬、京都府八幡市の佐々木洋一さん(64)は、自宅ベッドに横たわっていた。顔の筋肉と左手の指先だけは動かせる。口パクで意思を伝え、特殊なマウスでパソコンを操る。「初めまして」。笑顔とともに迎えてくれた。

 中日ドラゴンズの大ファンと聞いていたので、記者は「今年はなかなか調子が出ませんね」と水を向けた。すると、「まだまだ(これから)」と答えが返ってきた。

ストローで泡盛

 佐々木さんは胃に直接栄養を入れている。例外は夜のひととき。氷を入れたコップに泡盛の「久米仙」を1センチほど注ぎ、ストローで飲む。しかも毎晩欠かさない。「これが楽しみ」と笑みを浮かべた。表情の豊かさに私は驚いた。

 京都市で起きた嘱託殺人事件のことを聞いた。ALSは徐々に筋力が衰えていく難病で、根本的な治療法は確立されていない。亡くなった患者の女性は「安楽死」を望んでいたとされる。佐々木さんはそれまでと打って変わり、言葉を選んで話してくれた。

 「ALSの人は、死を誰もが一度は考える。僕もそうだった」と切り出した。そして続けた。「生きたいという気持ちとどちらが強いかだ。僕は今、(死は)頭にない。生きたいという気持ちを周りが作ってくれた」。「周りとは?」と私が尋ねると、佐々木さんは照れくさそうに濁した。

何で自分なんだ

 9月上旬、佐々木さんの元を再び訪れた。佐々木さんがALSと診断された時のことなどを妻の章子さん(61)から詳しく聞いた。

 佐々木さんは8年前、臨床検査…

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