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 札幌市北区の介護老人保健施設「茨戸(ばらと)アカシアハイツ」で新型コロナウイルスの感染者92人、死者17人が出たクラスター(感染者集団)について、市が検証報告書をまとめた。7日の市議会新型コロナウイルス感染症対策調査特別委員会で報告された。感染が拡大する中、情報の把握や介護・看護職員の確保が難航した状況が浮き彫りになった。

 報告書によると、4月15日、アカシアハイツの近くにある系列の軽費老人ホームで入所者1人の感染がわかった。これが大規模な集団感染の起点となった。この人は、アカシアハイツに隣接する系列のデイケアセンターを利用していて、同23日までに、センターの通所者と職員に感染が広がった。

 デイケアセンターとアカシアハイツは1階が廊下でつながっていたが、当初は双方の行き来はほぼないとの情報だった。ところが、休憩室の共用や配膳などで行き来があることが判明。アカシアハイツで入所者の感染が初めて判明したのは、その直後の4月25日だった。

 報告書は、複数の施設がかかわる場合には、入所者や職員の行動歴について、より慎重な聞き取りが必要と指摘した。

 その後、アカシアハイツでは加速度的に感染が広がった。27日には入所者14人の感染が確認された。市内の医療機関の病床が切迫し、入院先が決まるまで施設内で療養することになり、2階に感染した人、1階に感染していない人を分ける「ゾーニング」が始められた。

 28日、市内で7例目のクラスターと認定され、29日にはピークの入所者18人、職員5人の感染が確認された。30日には初めての死者が出た。

 札幌市は他のクラスターが生じる中で体制が整わず、施設側も相次ぐ感染者への対応で多忙となった。適時に必要な情報を共有しあうことが困難で、必要な情報を把握できなかったという。5月初旬には職員の感染や退職などにより、従来の介護と看護の水準を維持できなくなった。報告書は「札幌市は感染管理、人員、物資の面から支援していたが、大規模な集団感染事例への知見が不足していたことなどから総合的な支援にはつながらず、有効な手段とならなかった」と指摘した。

 介護・看護職員の確保も難航した。関係団体に応援を頼んだが、施設内の状況が正確につかめない上に、必要人数や報酬を説明するのにも苦慮し、人員確保は円滑に進まなかった。介護職員は運営法人内で確保しようとしたが、アカシアハイツでの勤務に職員や家族の理解を得るのが難しかったという。

 5月3日には、感染や退職ですべての看護師が出勤できなくなった。入所者の基礎疾患などの基本情報が整理されていなかったため、数人の応援看護師だけで100人近い入所者に対応するという、過重な負担が生じていた。

 医療機関の病床が切迫していた時期とも重なり、施設内では急な病状悪化で亡くなる入所者が相次いだ。同16日に現地対策本部が設置され、入院が進んだが、亡くなった入所者は施設内での12人を含め、計17人に上った。介護・看護職員の確保が進み、クラスター発生前の水準に回復したのは5月下旬だった。

 報告書は教訓として、①高齢者施設などにおける感染対策②初動体制③施設への業務継続支援を挙げた。②では、現場の情報を正確に把握するために現地対策本部の設置の重要性を強調し、的確な初動が行える体制の整備を求めた。③では、医師・看護師、介護職員を早急に投入できる支援体制の構築の必要性を訴えた。(芳垣文子)

●茨戸アカシアハイツをめぐる経過(市の報告書などから作成)

4月15日 系列の軽費老人ホーム入所者の感染確認

  21日 隣接するデイケアセンター通所者の感染確認

  23日 デイケアセンター職員の感染確認

  25日 アカシアハイツ入所者の感染確認

  26日 複数の入所者が発熱し、広範囲の感染拡大と判断

  27日 入所者14人の感染確認。入院調整が難航、施設内療養の方針決定

  28日 札幌市がクラスターと認定

  29日 入所者18人、職員5人の感染確認

  30日 施設内で初めての死者

5月上旬 看護師・介護職員が半減

  3日 全看護職員が出勤できなくなる

  11日 死者が10人に

  12~15日 感染者10人が入院

  16日 現地対策本部設置

  25日 中断していた入所者の入浴を再開

6月4日 死者が17人に

  22日 現地対策本部解散

7月3日 市がクラスター収束を宣言