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 コミュニティー維持から「終活」まで、寺を拠点に住民同士で助け合う合同会社「慈愛サポートセンター」が岩手県大槌町吉里吉里で設立された。4日、社員の入社式があった。

 人口約2千人の吉里吉里地区は、井上ひさしの小説「吉里吉里人」のモデルになるほど自治力が強いことで知られるが、震災後、高齢化が進んだ。お年寄りだけの世帯も増え、「自分たちが死んだら、後始末や墓の世話はどうしたらいいか」と、地区住民の先祖の墓が並ぶ吉祥寺の高橋英悟住職(48)に相談する人も目立ってきた。

 「このままでは地域社会が成り立たなくなる」と、高橋さんは住民が相互に必要な支援を行う組織を思い立った。1年前に檀家(だんか)を集めて提案したが、「あえて作らなくてもそれぞれでやれる」と反対意見が多かった。

 しかし、今年のコロナ禍で帰省できなくなった人から、「代わりに墓参りや掃除をしてほしい」との依頼が寺に10件近くあった。高齢者世帯も、里帰りできない息子や娘の顔を見られない状況に不安感が増し、「やはり必要だ」との声が強まった。

 会社は吉祥寺を拠点に、日頃は寺の施設管理をしながら様々な相談ごとを受け付け、遺言書の書き方の指導やパソコンのパスワード管理など、終活関連の支援をする。

 寺では年間50件ほどの葬儀があるが、会員になった人には、葬儀や役場への手続き、その後の供養、相続に関する相談、遺品の整理などをワンストップでサポートする。利益が目的ではないので、料金は安くできる。住民が気軽に寺に集まれるように、境内にカフェも開く計画だ。

 スタッフはすべて地元住民。代表社員の芳賀衛さん(72)は吉祥寺の護持会の会長で、元葬祭会社員と寺の管理をしていた30~40代の2人が正社員、事務はパート社員1人が担う。行政書士の資格を持つ役員もいる。持続可能なサポートを実現するため、地域内でお金を回し、子育て世代の雇用も確保することをめざす。

 電話は24時間365日受け付ける。高橋住職は「寺としての活動には限界もあり、地域にセーフティーネットが必要だと感じていた。困った時は、どんなささいなことでも相談してほしい」と話している。(東野真和、藤谷和広)