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 大阪市立高3年の櫃本健大朗(ひつもとけんたろう)さん(17)が10日、レスリングの全国高校選抜大会個人戦80キロ級に出場する。高校からレスリングを始め、何度もやめようと思いながら顧問と一緒に気持ちをつないできた。新型コロナウイルスの影響で7カ月遅れで開かれる高校最後の大舞台。「すべてを出し切りたい」と意気込む。

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 大阪府枚方市にある大阪市立高レスリング部の練習場。櫃本さんは真っ赤なシューズのひもを結び、顧問の芦田隆治(たかはる)先生(63)と組み合った。

 櫃本さんの両耳は内出血で硬く変形している。厳しい練習に耐えてきた証しだ。「せっかく良いイヤホンを買ったのに使えないんです」と苦笑いする。

 レスリング部は旧制中学校時代の1946年に創立され、全国の高校の中で有数の歴史を誇る。五輪選手や国体優勝者も輩出してきたが、今は部員5人だ。

 櫃本さんは中学まで野球をしていた。丸刈りが嫌で、高校では別の競技を始めようと思っていたところ、レスリング部の先輩から熱心な勧誘を受け、「何となく入部した」。

 だが一緒に入った友人はしばらくして脱落した。学外に練習に行っても経験者との差を思い知るばかり。しんどくて何度もやめたいと思った。

 受け身だった姿勢が変わったのは2年になってからだ。府内の大会で結果を出し、表彰されるとがぜんやる気に。勢いだけで攻めていたのが、寝技に持ち込むしぶとさを身につけた。

 指導者である芦田先生の存在が大きいという。「一度も怒られたことがない。一人ひとりに合った技を教えてくれる」と櫃本さん。2年冬の近畿予選では敗者復活で勝ち上がり、全国選抜大会への出場を決めた。

 だが新型コロナの影響で今年3月に予定されていた大会は中止に。櫃本さんは筋トレとランニングを欠かさなかったが、一時は目標を見失いかけた。いったんは中止が決まった大会が、10月に新潟市で無観客で開催されることが決まった。

 「レスリングが自分に自信をくれた。もっと踏ん張れたんちゃうかと後で悔しがることのないように、練習してきたすべてを出し切りたい」。櫃本さんは闘志をみなぎらせる。

 芦田先生も大阪市立高出身で、高校からレスリングを始めた一人だった。母校でレスリングを教えたいとの夢をかなえるために体育教師に。五輪など国際大会の審判としても活躍し、定年後の再任用で3年前、母校に戻ってきた。

 「部員が少なく練習時間は短い。だからこそ個性を伸ばす練習をしてきた」。櫃本さんのことを「教えたことを素直に体で表すことができる存在」と評する。

 芦田先生の教え子で、高校からの初心者で全国選抜大会に進んだのは初めてだ。「しんどくても続けることで違う世界が広がると彼自身が示してくれた。指導者冥利(みょうり)に尽きます」(机美鈴)

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