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 緑や水色をあしらった大きなバッグを背負って自転車で飲食物を配達するサービスが、広島にも浸透しつつある。ただ、心配されるのが自転車の事故だ。広島県警は事業者の一つを「マナーアップ推進事業所」に指定し、交通ルールを守る「旗振り役」にと期待する。

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 県警は9月23日、飲食宅配サービス「ウォルト(Wolt)」を展開する「ウォルトジャパン」(広島市南区)を「自転車マナーアップ推進事業所」に指定した。さらに、同社に登録する配達パートナー(配達員)約400人の中で、自主的にヘルメットをかぶるなど安全意識の高い5人を「自転車マナーアップ推進リーダー」に指定。今後、県警の交通安全イベントなどで協力を求めるという。

 県警交通企画課の吉田真太郎課長補佐は「フードデリバリーはコロナで注目を集めているからこそ、マナーを啓発していただきたい」と期待を寄せる。

 飲食宅配サービスは、スマートフォンのアプリなどで飲食店の商品を注文した利用者に、配達員が飲食物を届ける。飲食店が直接届ける出前と違い、届けるのは各サービス会社に登録する配達員だ。配達員の多くは自転車やバイクを使う。

 ウォルトは今年3月、広島市内の一部でサービスを開始。今月8日から呉市の一部にも対象を広げる。コロナ禍で外食を控える動きがある中、競合他社とともに注目を集めている。

 ただ、懸念されるのは自転車による事故だ。

 県警によると、飲食宅配サービスの自転車配達員が絡む事故は今年3件あり、1件は配達員が幼児をはねて軽傷を負わせた。ほか2件は車との事故で、配達員が軽傷を負った。配達員がスマホを見ながら運転しているといった苦情も警察署に寄せられているという。

 業者側も安全対策に気を配っている。ウォルトジャパンは配達員と契約する際、広島市の本通の自転車通行禁止時間帯や、交通標識の意味などを問う適性テストを課している。

 さらに同社はヘルメットのほか、配達員が運転中にスマホを触らないよう、自転車にスマホを固定するホルダーも貸し出している。同社の事業立ち上げ責任者、福井優貴さん(33)は「広島から自転車マナーの啓蒙(けいもう)を続け、皆さんの安心に貢献する」と意気込む。配達員の河村雄大さん(40)は「見られている意識を持って運転し、他の配達員が分からない点はこちらから教えたい」と話した。

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 子どもから大人まで手軽に乗れる自転車だが、法律では軽車両に位置付けられる「車」の仲間だ。県内の自転車事故による死者は昨年より5人多く、県警は注意を促している。

 県警交通企画課によると、今年1~9月の県内の交通事故は速報値で3419件(前年同期比1200件減)。約2割の695件に自転車が絡み、うち333件は自転車側に信号無視などの法令違反があった。自転車側に主な原因があるとされる死傷事故は103件に上った。

 また、1月~10月5日の交通事故死者50人(同1人増)のうち、自転車に乗っていたのは7人(同5人増)。7人中4人は交差点の事故で、そのうち2人は自転車側の責任が大きいと判断された。亡くなった人の年齢は16歳~84歳と幅広く、事故の時間帯も様々だった。

 「自転車は弱者でもあるが、加害者にもなることを意識してほしい」と県警交通企画課の吉田課長補佐。自転車事故の死因は頭部外傷が多く、県警はヘルメットの着用を促すほか、自転車は原則、車道の左側を走る▽歩道を通行する場合は車道寄りを徐行する▽交差点では一時停止する――といったルールの徹底を呼びかけている。(西晃奈)

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