無罪主張の被告、遺族「無念向き合っていない」池袋暴走

河崎優子、新屋絵理
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 東京・池袋で昨年4月、乗用車で母子を死亡させ9人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の初公判が8日、東京地裁であった。法廷では、妻と娘を失った松永拓也さん(34)の供述調書が読み上げられた。

 調書によると、事故のあと、拓也さんは、自宅で横たわる真菜さんと莉子ちゃんのとなりに一緒に寝て、手をつないだ。莉子ちゃんが生前、3人で手をつなぐことを喜んでいたからだ。でも「手は冷たく固く、握っても握り返してくれることはなかった」。

 通夜のあとは、「ノンタン」の絵本を莉子ちゃんに読んで聞かせ、2人に話しかけた。「真菜と出会えて幸せだったよ。莉子を天国に連れて行って」「お父さんは莉子が大好きだったよ。お母さんと手をつないで離さないで」。2人の棺を往復しながら、「ありがとう、愛しているよ」と繰り返したという。

 拓也さんは調書の朗読を聞きながら、天井を見上げたり、顔をゆがめて目を強く閉じたりした。傍聴席からはすすり泣きが聞こえた。

 飯塚被告は「アクセルを踏み続けたことはないと記憶している。車に何らかの異常が生じ暴走した」と起訴内容を否定。弁護人は「過失はない」と無罪を主張した。拓也さんは公判後に開いた会見では、法廷で見た飯塚被告について「むなしさ、悲しさ、怒り、いろんな感情が入り乱れた。(被告は)2人の命と遺族の無念に向き合っていない」と悔しさをにじませた。

 拓也さんは、「同じ悲しみを繰り返したくない」として交通事故遺族の支援団体に入った。この裁判をきっかけに「どんな交通社会をつくっていくのか、運転できなくなった高齢者をどうフォローするのかをみんなに問いかけたい」と訴えた。(河崎優子、新屋絵理)