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 東京・池袋で昨年4月、乗用車で母子を死亡させ9人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の初公判が8日、東京地裁であった。飯塚被告は「アクセルを踏み続けたことはないと記憶している。車に何らかの異常が生じ暴走した」と起訴内容を否定した。弁護人は「過失はない」と無罪を主張した。

 今回の事故は、高齢者運転の是非をめぐり、大きな議論を呼んだ。

 内閣府の交通安全白書によると、75歳以上の運転免許保有者は2019年末時点で583万人。10年間で約1・8倍に増えている。

 警察庁のまとめでは、75歳以上が19年に起こした死亡事故は401件。免許を持つ人10万人あたりの件数でみると、75歳未満の2倍以上の割合で死亡事故を起こしていた。車の事故の要因としては、75歳未満では0・6%にとどまる「ブレーキとアクセルの踏み間違い」が7・8%を占めた。

 一方、弁護側は初公判で、事故は車の異常が原因だと主張した。公益財団法人「交通事故総合分析センター」によると、車や二輪車が19年に起こした人身事故約36万件のうち、原因の一つに車両の整備不良があったのは391件。このうちブレーキの不良は184件で、死亡事故に至ったのは1件だった。

 近畿大学理工学部の梶原伸治准教授(自動車工学)は「アクセルを感知するセンサーやエンジン出力を調整するモーターが故障する可能性がゼロとは言えないが、基本的に故障すると車は止まるように設計されている」と話す。

 政府は今年6月、高齢者の事故対策として道路交通法を改正。一定の交通違反をした75歳以上の人が免許を更新する際は、運転技能検査(実車試験)を義務づけた。合格しなければ免許を更新させない制度で、22年までに始まる。

 警察庁は運転に不安を感じる高齢者に、免許の自主返納も呼びかけている。19年の自主返納は約60万件で、過去最多を記録。75歳以上が約6割を占めた。(根津弥)