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 海外の百貨店で日本製の高級包丁が根強い人気を集めている。切れ味や洗練されたデザインが支持され、欧米中心に累計販売が800万本を超えるブランドもある。ヒットの軌跡をたどると、「刃物の町」の百年企業を苦境から救った、技と技の融合にいきつく。

 日本のほぼ中央に位置する岐阜県関市は、鎌倉時代末期から南北朝時代にはじまり、室町時代には有名な刀匠を生むなど、800年の歴史を持つ「刃物の町」だ。英国のシェフィールド、独のゾーリンゲンとならぶ「世界の3大刃物産地」として知られ、市内には90ほどの刃物メーカーがある。

職人支える「切れ者」

 その一つ、高級包丁を手がける大野ナイフ製作所は、周囲に田んぼが広がるのどかな町工場だ。徒弟制度で鍛え抜かれてきた職人たちが、様々な工程を支えながら、製品を仕上げていく――。作業現場は、そんなありがちなイメージを覆す。

 1本2万円ほどする包丁の刃をロボットアームがつかむと、刃の表面を磨く機械にセット。刃と柄をつなぐ溶接も、ロボットが次々と仕上げていく。高単価の鋼材を包丁の形に切り出すレーザー加工や熱処理にはじまり、90~100におよぶ工程の至るところにロボットや機械が導入されている。作業員たちが技をふるうのは、切れ味を左右する刃先や柄の微細な研磨などに限られる。

 大野武志社長(67)は「以前は職人のカンが頼みで、技術や品質にばらつきがあった。誰でもできる単純作業は自動化に置きかえることで、効率的に量産することが可能となっている」と話す。

 大手刃物メーカーにOEM(相手先ブランドによる生産)供給する高級包丁は月産5万5千本にのぼる。約280種類あり、店頭での価格は1万~10万円ほど。売れ筋は2万~3万円の商品という。大半は欧米などへの輸出で、英国の高級百貨店「ハロッズ」にも並ぶ。高級包丁は「旬」ブランドで知られ、累計800万本以上の出荷を誇り、その生産をほぼ一手に手がけている。コロナ禍でも富裕層を中心に売れ行きが堅調で、供給が追いついていないのだという。

明日の仕事がない…

 大野ナイフ製作所の創業は1916(大正5)年。輸出用のポケットナイフなど洋包丁を手がける一方、70年代以降は国内の量販店向けの包丁を製造してきた。

 転機はバブル後の90年代半ばに訪れた。安い中国産の包丁との価格競争が激しく会社は苦境に陥った。当時専務だった大野社長は「明日の仕事がないくらいヒマだった」と振り返る。廃業か、事業継続か。岐路に立つなかで着目したのが、戦う土俵を大きく見直すことだった。

 大野社長は20代前半、語学の…

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