大阪大学教授で社会学者の山本(やまもと)ベバリーアンさん(60)は、8年前に遺伝性血管性浮腫(HAE)と診断された。突然、顔や手足、おなかなどがはれて、激しい痛みに襲われる病気だ。診断までの40年、12歳から原因不明の症状とつきあってきた。
食事が怖く
英国で育った。大学生だったころ、病院で腹痛を訴えると、食中毒を疑われた。思いあたることがなく、食事が怖くなった。食べられず、やせすぎになった。
腹痛を繰り返す「過敏性腸症候群」と診断され、薬が処方されたが、だるくなり眠くなっただけで、痛みは変わらなかった。
夢だった教師になったものの症状が悪化してやめざるをえなかった。再び挑戦して、26歳の時、九州の英会話学校の教師の職に応募した。
友人から「日本はとてもいい国だ」と聞かされていたので、行きたいと思った。暮らし始めて、「空が青い」と感じる日本が好きになった。
2年で英国に戻り、大学院に入って研究した。日本の若い人の妊娠や中絶を社会学の研究対象にして、日英を往復する生活が始まった。1991年、日本人と結婚し、生活の拠点を日本に移した。2006年には阪大講師の職を得た。
しかし、痛みがなくなったわけではなかった。
急におなかがはれて・・・
07年の夏、阪大構内のレストランに向かっていた。海外から招いた研究者と、昼食をとろうとしていたところ、急におなかがはれて痛くなってきた。脂汗がにじむ。痛みはどんどん激しさを増す。「すみません。具合が悪いので、みなさんで行って下さい」
研究室に戻ろうとしたが、歩けない。同僚が腕を支えてくれた。家まで車で送ってもらい、吐き続けた。週末は、海外の研究者を京都に案内しようと計画していたが、それどころではなかった。
この症状はいつ始まるかわからない。ある時は30時間、吐き続けた。いつもより痛みがひどいので、病院を受診すると、救急外来の医師からこう告げられた。
「腸がはれて、腹水もたまっ…