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 家庭裁判所の元調査官が担当した少年事件を題材に、論文を公表した――。これによってプライバシーを侵害されたとして、元少年が元調査官らに賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第二小法廷(岡村和美裁判長)は9日、プライバシー侵害を認めた二審・東京高裁判決を破棄し、元少年の訴えを退けた。

 第二小法廷は、元少年の非行事実や成育環境など元調査官が得た情報は「少年法の趣旨に鑑みて秘匿性が極めて高い」と指摘した。ただ、執筆時には本人が特定されないように配慮があり、発達障害の正しい理解を広める論文には「重要な公益を図る目的があった」と認定。プライバシー情報を公表されない利益が、公表理由を上回るとまではいえないと結論付けた。

 審理した裁判官4人の全員一致の結論だが、草野耕一裁判官は「結論に至る理由が異なる」と意見をつけた。その中で草野裁判官は、元少年の深刻な体験も論文には描かれ、仮に少年時に知ったら「いかほどの精神的苦痛を受けたか」と言及。公表について「改善更生という少年法の趣旨に抵触する」と記した。ただ、元少年が実際に知ったのは公表から7年以上後で「改善更生に悪影響を与える関係にない」とした。(阿部峻介)