「裏かかれた」巡らぬ天命 暗中模索の石破氏に映るもの
松山尚幹
天命はまためぐってこなかった。
「石破茂 68票」。9月14日の自民党総裁選。石破茂元幹事長は、スクリーンに映し出された一番少ない自分の票数を、小さくうなずきながら見つめていた。
会場から人がはけ始め、石破氏もホテルのエレベーターの方に向かった。
1人の男が近づいてきた。石破派会長代行を務める山本有二元農林水産相だった。山本氏は、石破氏がよく講演でとりあげる猪瀬直樹氏の著作「昭和16年夏の敗戦」をあげて語気を強めた。
「日本は負けると分かっていたのに戦いに突っ込んだ。それと同じではないか。この責任をどうとるんだ」
山本氏は、傷口に塩を塗るようなものだと思ったが、あえて突きつけた。
石破氏は、ただ黙って聞くし…

自民党総裁選2020
安倍晋三首相の辞任表明を受けた自民党総裁選は、次の首相を選ぶことに事実上つながります。出馬を表明した3氏の動きを紹介します。[記事一覧へ]